私は次の日、普通に会社へ行った。喋れなくても、この前みたいにパソコンに入力すればコミュニケーションが図れる。丁度良い事にパソコン入力も随分早くなっているのだ。
私は事務所に入ってお辞儀をすると、直ぐにパソコンの電源をいれた。ワードを立ち上げる。

『お早う御座います。喉の調子が悪くて、今日はパソコンで伝えたい事を話します。電話の応対は出来ませんが、データ入力は出来ますので、宜しくお願いします』
林さんがそれを見てから驚いた表情でこちらを見る。

「声が出ないなんて大変じゃない。大丈夫?」
『はい。病院で診て貰いました。失声症らしいです』
「まあ。ストレスかしら」
『この会社のストレスではないと思うので気にしないで下さい』
「今野さん……。解ったわ。じゃあ、仕事はデータ入力メインでお願いね。辛かったら何でも相談してね」

私はホッとした。喋れないなんて社員として失格だと思っていたからだ。でも受け入れて貰った。もう転職なんて考えない様にしよう。いや、話す事が出来なくなった今、転職なんて不可能なんじゃないか。