そうして窓際の席に着いた。武田さんが向かいに座る。私はちょっとドキドキしたが用意してきた言葉がある。大きく息を吸ってから
「もし、武田さんが暇なら、私のマンションへ来ない?」と訊いてみた。

「行っていいの?」
「散らかってて汚いけれど、それでも良かったら」
「行く。行く。行きたい」
「じゃあ、パソコンは私の家で教えるね」
そうして、武田さんと二人でイタリアンのコース料理を食べた後、私の自転車を押してマンションまで仲良く一緒に歩いて帰った。着いたのは8時30分であった。

「今、鍵を開けるね。散らかっているから驚かないでね」
「うん。おじゃましす。何だー綺麗だよ」
「実は、武田さんを呼ぼうと思って、何日か前から綺麗に掃除をしていたんだ」
「気を使わなくってもいいのに」
「何とかもう1人位は寝る場所もあるから泊っていってもいいよ」
「本当?じゃあ、明日ここから工場に行こうかな」

武田さんは行儀良く絨毯の上に座る。
「紅茶とコーヒーどっちがいい?」
「じゃあ、紅茶がいいなー。甘いのが飲みたい」
私は砂糖をたっぷり入れた紅茶を二人分作る。紅茶のいい香りが鼻に抜けた。なんだか気分が良くなった。

そうしてテーブルの上にパソコンを置いてスイッチを入れた。
「見て、タイピングゲーム。私これにハマっているの」
「えー面白そう。教えて。教えて」
私たちは1時間程パソコンで遊んだ。武田さんを誘ってみて良かった。