「林さん、いっぺんに言っても今野さんが覚えるの大変だよ。今野さん、徐々に覚えてくれればいいからね」
榎本さんが気を使ってくれる。

「はい」
「そうよ、御免ね今野さん。忙しく言っちゃって。解らない事があったら何でも相談してね」
「はい。たぶん、聞くことが沢山あると思います」
「遠慮しないでね。あら、もうお昼の時間。今野さん、お昼持ってきたの？私はコンビニで何か買ってくるわ。欲しいものあったらついでに買ってくるわよ」
「いえ、いいです。大丈夫です」
私は遠慮をして言った。

「じゃあ。先に食べて休んでいてね」

ああ。この職場、皆いい人みたいだ。転職して良かった。捨てる神あれば拾う神ありなんだなと思った。

そう、神様がいるのなら、こういう人達を贔屓してほしい。でも神様は贔屓なんてしないのかな。

私は椅子に座ると、目の前のパソコンを見た。キーボードはアルファベットの刻印を見ながらでないと打てないし、最新のオフィスの使い方も知らない。大丈夫だろうか？