次の日私は工場に行くと採用の結果を武田さんに教えた。
「良かったね。お祝いしなくちゃね」
武田さんはまるで自分の事のように喜んでくれた。
「今度二人でランチに行こうよ」
色々考えながらも私の声は弾んだ。ついつい顔が綻んでしまう。
「うん。パソコンも覚えたら教えてほしいな」
「勿論だよ」

顔を見合わせて仲良く笑みを交わした。

しばらくして武田さんは何時もの仕出し弁当を食べ終わると、
「工場には何て言って辞めるの?」と心配そうな顔をした。
「そうだねー。やっぱり正直に仕事が合わなかったって言わないとだよね」
「そっかー。でも辞めるまで2週間が辛いよね」
「ああ、確かに」
上司ともギクシャクしてしまうだろう。
「しょうがないよ」
私は食堂の外をみた。雨がしとしと降っていた。

私はその日の帰りに上司に今月中に仕事が辞めたいと告げた。
「駄目よ。困るわ。今人手が足りないんだから」
「でも、この仕事私には合わないみたいで……」
「貴方の都合だけで辞められたら大変だわ。何のために今迄面倒をみてあげたと思っているの?」
「はい……」
「次の人が見つかる迄アルバイトでもいいから来て頂戴。いいわね」

「でも、もう次の仕事が決ま……」
まただ。また声が出ない
私ははっきり断る事が出来す、中古車屋さんがお休みの土曜日と日曜日はアルバイトをしなくてはいけない事になってしまった。