私は手紙を何度も読んで実家を懐かしく思った。実家に帰る・・・か。それを考えていなかった。だが高校を卒業して田舎から東京に近い所に出てきた私はまだ何の成果も無い。帰るのは少し早いかなと思う。後数年は一人で頑張りたい。

中古車屋さんの採用の電話は1週間後の夕方、仕事が終わってからかかって来た。

「今野さん、採用が決まりました。来月から来てください。宜しくお願いします」

私は、嬉しくて飛び上がる程に喜んだ。これであの嫌な上司と別れられると思うと嬉しい。いや、そんなに嫌ったらいけないのかもしれない。リーダーだって真面目に仕事をしているだけなのだ。働きたい会社に転職出来る、私は幸せなのか。そう言えば昔を思い返すと母だってスーパーの仕事が好きだと言った事はない。生活の為に無理やり行っていたようにも思える。父も好きで毎日畑仕事している訳でもなさそうだ。両親の後ろ姿は毎日いつも何か重い物を背負っているようで悲しかった。そう思うと手放しで喜べない気分になってきた。考えすぎなのかな。