「……カイさんは、人間のことが憎くないのですか? カイさんの両親がもし人間に会わなければ今頃朗らかな家庭があったかもしれないのに。人間が、カイさんから両親を奪ってしまったのに」

 カイさんは、一瞬目を丸くしたけれどすぐに優しい目に戻る。

「少なくとも、両親が居なくなるまでは、うちは笑顔の絶えない家庭だったよ。確かに……幼い頃は人間のせいでって思ったこともある。でもな、スミレに会って、あいつは温かい家庭で育って愛された動物の妖がついてるだろ、それを聞いているうちに憎悪を人間に向ける気持ちがどんどん消えていったな。それに、両親は悪いことをしたわけじゃない。その反対だろ? だからきっと、あそこに住むやつらだって、いつかは分かってくれると思うんだ。人間が悪い奴らだけじゃないってこと」

「カイさん……」

 私は意を決した。自分の思いをカイさんに知ってほしい。

「私、どうしてもこの災いを終息させたいんです。だから、ヤクモさんの友達の屋敷の方に会うのを許してもらえませんか? 情報が、必要なんです。この街を守るためにも」

 その言葉を聞いたカイさんは、観念した顔をして私の顔を見る。

「……分かった。ただし、必ず俺かハトリかスミレと一緒に行ってもらう。1人は危険だ」

「分かり、ました」