偶には、自分で料理をしてみようと冷蔵庫を開くと、流石料理人のカイさん、豊富な食材が目に入って来て何を作ろうかと迷ってしまう。

 お肉、お魚……。自分でも作ることのできるもの、と考えた結果、無難に焼き鮭を作ることにした。

 他にはカイさんの手作りの常備菜があって、それをお皿に並べる。

「あ、そうだ……。本、持って来よう」

 まだ読みかけの例の本を自分の部屋から持ってきてテーブルの上に置いた。鮭が焼けるまで、それを読む。

「キセキバナのことは書いてないなあ……、ヤクモさんの友達に聞きたいけれど……」

 それには危険が伴うことは容易に分かることで、なかなか一歩を踏み出せないでいる。

 でも、このまま何もせずに無駄にただただ時間を過ごしていることほど生産性のないものはなく、それなら万全を期して会いに行くのがいいかもしれない。

 自分が犠牲になるか、この街の人が全員犠牲になるか、それとも誰も傷付かないで平和を維持するか。

 そんなの考えなくても答えは出てる。

「うん、聞きに行こう。って、鮭焦げちゃう」

 私は少し焦げた匂いの漂ってくるキッチンに急いで戻った。