お屋敷に関する話を終えると、モミジさんが、名前と同じオレンジ色の紅葉の和菓子を持ってきてくれた。

 可愛らしい大きさの和菓子には、日本の風情を感じる。

「これ、今年の新作なの。ぜひ食べてみて」

「ありがとうございますっ」

 上生菓子はそこに存在するだけで気品を放っている。

 食べるのがもったいないほどに美しく、鑑賞用としてとっておきたいくらい。

「じゃあ、いただきます」

 黒文字で奇麗に、一口サイズに切って口に運ぶ。

 和菓子は、食べ方にも気を遣う。特にこの上生菓子は。

 崩してしまわないように、大きな口を開けて食べないように……。

「これも宴に出すの。毎年こうして宴のために秋に因んだ和菓子を作るのよ」

「そうなんですね」

 宴、なんて今までの私には縁遠すぎる世界で、そこでどんなことが繰り広げられるのか想像もつかない。

 普段私とは面識のない位の高い人たちが行うものだと思っていた。多分その考えは間違いではないと思う。

 宴のために毎年違う上生菓子を作ってもらうなんて、普通の人には出来ないもの。