「カイさん」

「……何も話さないように」

「……はい」

 やっぱり、この人が多分『地主』だ。

 でも、誰かを恨むような人には見えないし、ましてや人間から虐められてきた動物の妖が付いているようにも見えない。どちらかと言うと、お金持ちの家で育てられた血統付きの犬の妖という雰囲気だけれど……。

「君は……どうしてここで働いているんだい?」

 その人は私の顔を見て言っていった。

「あ、えっと……カイさんの料理やハーブティーが好きで、私も同じように人を幸せにするものを提供したいと思ったからです。だからここで勉強を兼ねて、と言いますか……」

「それは素晴らしい志だね」

「あ、ありがとうございます」

 三白眼の妖艶な目が三日月の形になって、より艶やかさを増す。

 だけどその艶やかさが逆に、全てを見透かしているような気がして、でもここで目を逸らしてしまったら何もかもが終わってしまいそうな気がして、彼の顔から目が離せなかった。