「お、真由じゃん」

「ヤ、ヤクモさん」

 伸ばしていた腕をさっと引っ込める。

「今日はお買い物ですか?」

「ちょっと散歩がてらに。真由は?」

「ええと、本を買いに」

 ヤクモさんは、私の指が触れた本に目を向けて、その文字を見ている。

「人間と妖? ……真由、人間のことについて調べてるのか?」

「あ、その、ちょっと興味が」

「それなら、俺の友達がこういう本たくさん持ってるぞ? 向こうのほうに屋敷あるだろ? あそこに、住んでるんだけど。屋敷のやつらは基本怖いけど、そいつだけはなんか違うんだよな。優しいっていうか」

 ヤクモさんの友達が屋敷に住んでいる? ということは、その人は反人間の妖ということで、多分それは私にとっては危険すぎる。

 それにしても、ヤクモさんとその人たちが知り合いだなんて……ううん、変なことを考えるのは止めておこう。

「だ、大丈夫です。そんなに詳しく知りたいというわけでもないので」

「そっか。あ、そういえばこの前このネックレス見つけたんだけど、真由にあげるよ」

 ヤクモさんは、深い青色の、ターコイズに似た石のネックレスを私にくれた。

「きっと真由に似合うはず」

「ありがとうございます」

 渡されたその石を見ていると、その青色に吸い込まれそうな不思議な感覚に襲われる。

 ヤクモさんは「じゃあまたな」と、この場を後にした。