街に来て10分くらい歩いた時、ある建物の前でハトリさんは歩くのをやめた。

「ここ、入ろうか」

 ウッドハウスの建物に、建てられた看板には『カフェ』と書かれている。

「いらっしゃいませって、ハトリか。と、そいつは?」

「この子、面倒みてあげて」

「はあ? なんで俺が」

「家、余裕があるでしょ? 僕も出来るだけ見に来るから」

 店内は、なにやらいい匂いがする。

 あまり嗅いだことのない匂い。

 あ、でも……ほんのりと大好きなバジルの香りがする。

 それにしても、この人もハトリさんとは違うタイプだけれど顔が整っていて、纏う空気が輝いていて……。

「つか、人間じゃねえか」

「そう。だから、あのハーブティー頼むよ。あの人たちにばれたらあんまり良くないだろう?」

「ったく、仕方ないな」

「ってことで、とりあえずカイのところに泊まるんだよ?」

「は、はい。その、よろしくお願いします」

「分かったけど、ただじゃないぞ? 畑の仕事をしてもらうからな」

「もちろんですっ、なんでもします」

 ふんっとカイさんは鼻を鳴らすと、とりあえずこれを飲めと何やら薄いグリーンのお茶らしきものを渡してきた。

 飲むと、すうっと体に染みて美味しい。

 今までに飲んだことのない味で、ほんのり甘くて飲みやすく、喉も乾いていたせいですぐに飲み干してしまった。

「じゃあ、ハトリちょっと見てて。案内してくるから」

「うん、分かった」

「じゃあ、行くぞ」

「はいっ」