「シドウ様って……」

「大丈夫大丈夫。真由ちゃんはいつも通りカフェにいれば」

 ハトリさんはりやっぱりいつも通りの表情を浮かべていて、私の不安を煽るようなことをしない。

「ああっ、そろそろ花火上がるぞ。急ごうぜ」

 苺あめを買って、何種類か屋台の食べ物を歩きながら楽しんで、今はカフェへ向かっている。

 今は楽しいことだけを考える、大丈夫。

 そう自分に言い聞かせる。

 苺あめ喜んでくれるかな、なんて考えながら歩いているとカフェの建物が見えてきた。

 もう看板は出ていなくて、建物の中は光が灯っている。

 ちょうどカフェに入ろうとした時、中から扉が開けられた。

「おっ、良いタイミングだな。今から庭に行こうとしてたところだ」

「そうだねえ。そろそろだもんね」

「おう。なんか、飲むもの作っていくか? 喉乾いてるだろ?」

「うん、よろしく」

 ハトリさんは私とヤクモさんを連れて先に中庭に行く。

 そこにはすでにスミレさんの姿があり、なにやらお酒らしきものを飲んでいた。

 そんな姿がすごく大人びて見えて、見惚れてしまう。

「あら、真由ちゃんやっぱり何度見てもその浴衣似合ってるわね」

「スミレさんのおかげです」

「いいのよ。浴衣選ぶの楽しかったし」

「あ、あの。屋台でこれ買ってきたんですけど……」

 と、私は苺あめを渡した。

「あら、嬉しい。ありがとう」

 スミレさんが受け取ると同時に、音と同時に空に光が舞う。

 大きな花が、夜空に咲く。

「奇麗……」