次の日、その日もまた晴天で庭に咲く花々に水を遣る。

 その手を伸ばして葉を指で擦り匂いを嗅ぐと、爽やかな香りが充満する。

「わあ、いい香り。これ、なんて言うの?」

「ああ、それはね、バジルだよ。ハーブっていうもので、料理に使ったりするもの。他にもハーブにはたくさんの種類があってね、面白いよ」

「そうなんだ」

 もう1度バジルの匂いを嗅ぐためにしゃがんでその葉に触れる。

 ハーブ、初めて聞く言葉。

 それについてもっとお婆ちゃんに聞こうとして振り向いた時、お婆ちゃんの姿が消えていた。

「お婆ちゃん!」

 呼んでも返事はない。

「おばあちゃーーーん!!」

「真由、どうした?」

 お婆ちゃんの代わりに、お父さんやお爺ちゃんが走ってこっちに来る。

 でも、お婆ちゃんの姿はやっぱりどこにも無くて、たった数十秒前までは確かにここにいたのに。

「お婆ちゃんが、いなくなっちゃったの」

「お婆ちゃんは……違う世界に行ってしまったのかもしれない」

「違う世界……?」

 私たちのいるこの世界の他にも、どこかにもう1つの世界があるっていうこと……?

「でもきっと、お婆ちゃんなら大丈夫」

 後からやってきたお母さんが震える私の体をそっと包んでくれた。