空が深い青色からオレンジへとなりかけて来たその時、家を出た。

「真由、この実をもし何かがあった時に食べるんだ」

 それはブルーベリーのような濃い紫色の実で、どこかで見たことがある。

 あ、パジュベリーの実だ。

「ありがとうございますっ」

 森に着くと遠くの方に見えた、この前と同じ建物が。

 一歩一歩近づくほどに、心臓の鼓動の音が大きく耳に入ってくる。そして速度も一気に上がる。

 あまりの緊張で体の感覚がどんどんと抜けていく。

 これで、皆の苦しみが消える。さあ、行くの。

 硬くなった脚を拳で叩く。大丈夫、私には皆がついている。

 建物の前に着くとひとりでに扉がゆっくりと、まるで私のことを待っていたかのように開いた。中は暗い。だけど分かる、お婆さんの気配。

「よく来たね。2人とも中にお入りなさい」

 片足を建物の中に入れた瞬間に感じる冷気。外の方が寒いはずなのに、この建物中はそれ以上に温度が低い。

 目の前にある3つの玉。

「さあ、割りなさい」

「はいっ」

 短刀を両手で持って、思いっきり腕を上げて真ん中の玉を目掛けて突き刺す。

 カンッと音が響き渡る。

 だけど、割れない。

「どうして……?」

 短刀は光っている。何が足りないの?

 何度も何度も突き刺すのに、玉にはヒビが生えるどころか傷一つ付かない。

 もうだめかも、と心が折れかけそうになった時だった。