次の日目覚めると、背中をさされたという事実が嘘かのように体が軽い。

 顔を洗っていると大きな音でお腹がぐうっとなる。

「たくさん食べてたくさん働くぞっ」

 自分に負けないように、気合を入れる。

 そういえば、ほんのりとこんがりと何かが焼ける匂いがしてくる。

 それはより空腹は加増する。

「おはようございますっ」

 笑顔でいればきっと、風向きが変わる。

「おはよう。体はどうだ?」

「もう大丈夫な気がします」

「まあ、無理はすんなよ」

「はいっ」

 カイさんの美味しい料理とハトリさんのお母さんの薬があればいつも通り、ううん、いつも以上にパワーが体の奥から溢れ出る。

 そういえば……ミコトさん、大丈夫かな?

 シドウさんに頬を叩かれて、哀しみの色を浮かべていた。

 ミコトさんの言っていた『痛い』という言葉から感じる苦痛。

 人間である私が思うのも違うかもしれないけど……。

 叩かれたり投げられたり……分かる。

 虐待されて死んでいった悲しい動物だって、現実に目を背けたいほどにたくさんいるはず。

 動物も人間と同じなのに、命に軽いも重いもない。

 ふと思い出す。そういえば、ミコトさん何かを言いかけていたような…………、なんだろう。

 聞いてみたいけれど、私と話をしてくれるのか、そもそも会ってくれるのかも分からない。

 玉を壊す時私は…………、最悪のシナリオを予想しておかないと、いざそれが自分に襲いかかってきたときに自分が自分でいられなくなる。

 だから、逃げたくても怖くても泣きそうになっても、覚悟はする。