「だから、ハーブティーと和食、なんですね」

 自分を救ってくれたものだからこそ、人にもそれを提供している。

「ああ、あとはいつか両親が帰ってきた時に、被っていない方がいいかと思ってな。3人でカフェ経営っていうのもいいだろ?」

 結局、カイさんの両親はまだあの屋敷にいる。

 でもそれは多分、自分たちで決断したことだと私は思っている、ううん、そう思いたい。

「すごく素敵な夢だと思います」

「真由の夢は?」

 私の夢……。

「私は…………カイさんやハトリさんのように人の役に立つ何かを提供することです。自分が犠牲になっても、誰かが笑ってくれれば」

 だから、背中を刺されても、もし殴られたとしても、私はここの人たちを救いたい。

 人間によってもたさられた哀愁や憎悪を消し去りたい。

 楽になって欲しいの。

 そしたら多分、私の中に眠る憎しみも一緒にどこか遠くへと飛ばされる気がするから。

「真由は偉いな。背中の傷、ハトリの両親の薬のおかげで多分明日には無くなるはずだから、今日はゆっくり寝てろよ?」

「ハトリさんの両親って」

 そういえば、聞いたことがない。

「母親が薬屋だよ。ハトリの母親が作る薬は、その効果が強力なんだ。傷も深くなければ直ぐに治る」

「すごいですね」

「ああ、俺なんかよりもずっとずっとな」

 それを言うとカイさんは部屋を出ていった。