「あーあ。なあに? 偽善? 私たちの信頼を得られないと玉が壊せないから?」

「ミコトさん」

 蛇のような視線、そこからひしひしと伝わってくる憎悪。

 その視線に耐えきれなくて、私は目を逸らす。

「そんなんじゃ」

「人間なんて、自分たちのことしか考えないじゃない。あなたは死にたくないだけ。私たちのことなんて本当は考えてない」

「ミコト、止めなさい」

「シドウさんは洗脳されてるだけよ。人間よ? 動物だった頃のこと忘れたの?」

 パシンっ。

 シドウさんの手が、ミコトさんの頬を叩いた。

 ミコトさんは、叩かれた頬を押さえて涙目でシドウさんの姿を見ている。

「なんで……なんでっ」

「ミコトだって分かってるだろう? 真由さんが災いを終息させてくれたことを。あの種は、本当にこの世界を思う人間にじゃなければ見つけることはできない。そう、言われているのをミコトも知っているはずだ」

「それでも憎い。痛い、いつも蹴られて、投げられて、痛かった。ずうっと、痛かった。人間から受けた痛みは今も覚えてる!」

「だからこそっ! 私はその痛みを皆から消したいんですっ、あの玉を壊せば消える。皆の心が楽になる。それに、分かるから……憎む気持ち、私にも分かるから」
 
 ミコトさんの手を握ると冷たくて、震えていた。
 
 ミコトさんの言葉から受ける壮絶な痛み、想像するだけでずきんずきんとあちこちが疼く。

「本当に出来るの? あれを壊す時、あなたは」

 ミコトさんの言葉を最後まで聞く前に、私の意識は消えた。