「真由さん」

「キ……キョウさん?」

 いつの間にかキキョウさんが目の前にいて、透き通る瞳で私のことを見ていた。

 立っていたキキョウさんはしゃがんで私と視線を合わせる。

 そして、ふんわりと大きな柔らかい手で私の手を包み込んで、優しい笑顔をくれる。

 恥ずかしい。私は今何を思っていたの?

「大丈夫。真由さんなら大丈夫」

 その言葉が、割れかけていた私の心の隙間に入っていく。

「知って……るんですか?」

「一応ね。でも、本当かどうかは分からなかったから、真由さんには言わないでおいたんだ。大丈夫、真由さんは自分らしくしてればきっと、皆真由さんの優しい心を理解してくれるはず。……ミコトも」

 なんで、キキョウさんはいつも優しい言葉をくれるのだろう。

 流したくないのに、溢れてくる涙。

「キキョウさん……ありがとうございます」

 キキョウさんの言葉は屈折なく私の心に入ってきて、すうっと染み込んでいく。

 壊れかけていた私を修復してくれる。

 こんな風に思うのはキキョウさんが初めてで……。