「こ、こんにちは」

 知らない人と2人というのは緊張するもので、短いフレーズでさえ噛んでしまう。

「あなた、人間? シドウが言ってた」

 その言い方には刺があり、この女の子もまた人間が嫌いなんだということが伝わってくる。

「はい、そうです」

「キキョウに惚れてるの?」

 その人は直球にその質問をしてきた。

「えっと……その……」

「帰ってしまうんでしょう? それならその気持ちは隠しておいて欲しいわ。あなたも人間界に帰ればすぐにここの世界のことなんて忘れるだろうし……」

「それはないですっ。大切なこと、ここでたくさん学びましたから」

「あら、そう。でも、そんなの奇麗ごとよ」

 話していると、キキョウさんが戻ってくる。

「あの部屋で待ってるって。どうしよう、僕も行こうか?」

「いえ……大丈夫です。ありがとうございます」

 本当はもっとキキョウさんとお話がしたかったけれど、多分それは目の前の女の子が許さないと思う。なんだろう、私、すごく嫌われているような……。

「じゃあ、また」

「うん、今度カフェ行くよ」

「ぜひ」

 名残惜しさと共に、この場を後にした。