「いい感じに出来上がったわね」

 目の前には焼きたてのジンジャークッキーがあって、どれひとつ焦げていなくて匂いからも見た目からもとても美味しそうに仕上がった。

 それを見ていると、クリスマスが待ちきれず、早くその日がこないかと今から心が躍る。

「食べましょうか」

「はいっ」

 噛むとさくっと音を立てて割れた。

 出来立てのクッキーは暖かくて手作り特有の優しい味がしていて、お菓子屋で買うクッキーとはまた別の美味しさがある。

「そうだ、カイにも持って行ってあげたら?」

「そういえば……今までに手作りのものをあげたことなかったです。でも……料理人のカイさんにあげて大丈夫でしょうか?」

 素人のお菓子なんて、カイさんからしたらおもちゃのようなもの。

「大丈夫よ、きっと喜んでくれるはずだわ」

「そうですね」

 キキョウさんにもあげたいな……でも、キキョウさんはもう自分の家に帰ってしまったんだ。

 ずっとカイさんの家にいて欲しかったなんて我儘は言わないけれど、いなくなってしまったその日から少しばかりの喪失感を感じていた。

「あの……2袋分プレゼント用としてもらっていいですか?」

「ええ、もちろんよ」

 お世話になったのに、まだまだカイさんにもキキョウさんにもその恩返しが出来ていなくて、少しずつでいいから2人のために私ができることをするの。

 そういえば……2袋と思っていたけれど、もう1袋を加えて3袋にジンジャークッキーを詰めていった。