「やあ」

 次の日、朝食を食べてすぐにお屋敷に向かった。

 シドウさんはまるで私たちが来るのを予感していたかのように、門のすぐ近くで雲のかかった白色の空を眺めていた。

「シドウさん、お見せしたいものがあります」

 前置きなしに言いたいことを真っ直ぐに伝えた。

「ここじゃあなんだし、お茶でも飲みながら見せてもらおう」

 勿体ぶらなくてもいいのに、と思ったけれど、誰かに見られてしまうことを想定してのことなのかと思い私はその言葉に頷いた。

 宴が開かれたあの部屋に来ると、すぐにお茶が出される。

 紫色に輝くラベンダーティー。

「それで、何かな?」

 既に察しているような表情をしながら言うシドウさんの表情は、この状況を楽しんでいるように見える。

「キセキバナの種、持ってきました」

「へえ、本当に見付けられたんだ」

「これです」

 光るその種をシドウさんに渡した。シドウさんは「これがキセキバナの種ねえ」と長い指で小さな種を持つ。

 その種を一通り見たあと、テーブルの上に置いた。

「分かった。真由さんの本気、伝わったよ」

 その瞬間、シドウさんの言葉を吸い込んだかのように種から芽が出て茎がのび、大きな金色の花が開く。

「これ……」

 圧倒されるほどの、汚れのない美しさ。

「へえ、それがキセキバナ……ねえ、真由さん。僕はね」