キキョウさんは厨房まで私の手を握って送ってくれる。

 ありがとうと言う気持ちよりも…………。

「真由? どうした?」

「あ、えっと……」

 なんて言えばいいか迷っていると、代わりにキキョウさんが言葉を紡いでくれた。

「シドウさんが、真由さんのことを人間だと皆の前で話したんです。……それで、彼女にチャンスを与えると」

「チャンス?」

 カイさんは眉をしかめて話を聞いている。

 キキョウさんに続いて、今度は自分の言葉でシドウさんに言われたことを自分自身でも確認するためにゆっくりと話す。

「12月31日までに、キセキバナの種を見付ける事です。もし、見つけることができれば私の思いを本気だとみなして、信頼を与えてもらえると……」

「……なるほどな」

「その時キキョウさんが隣にいてくれて……」

 本当に、あの時キキョウさんの手が私を握ってくれなかったら今頃私はどうなっていただろう。

 あの部屋を出た瞬間泣き崩れて、床に大きな水溜りを作って、ここに帰ってくることすら出来なかったかもしれない。

「キキョウ、真由を助けてくれてありがとう」

「いえ、同じ年代の女の子が1人立ち向かっていると思うと居てもたってもいられなくて……」

「キキョウさん……」

 胸が温かくなる言葉を、どうしようもなく嬉しくなる言葉を、キキョウさんは伝えてくれる。