宴が始まる。

 御膳は全て準備できた。カフェの親しみやすい料理とは違う、高級感の溢れたそれら。

 同じ食材なのに、調子の仕方でこんなにも見せる表情が異なるなんて、料理はすごく奥が深いと思う。

「さあ、それでは宴の始まりです。料理をお運びしましょう」

 着物を着た女の人たちが数人入って来て、一人一膳を持って宴の間に向かう。私もその後についていく。

 カイさんはこの場にはいなくて、漠然とした不安で押しつぶされそうになる。

 この前の場所と同じ……。部屋の中に入ると、そこには雅やかな雰囲気が流れていて、宴に参加している皆は上品さを醸し出している。

「やあ、真由さん。ありがとう」

 一礼をしてシドウさんの前から立ち去ろうとした時だった。