「どうしてカイがここに?」

「今日の宴の料理を頼まれたんだ。今は街でカフェを経営していて……父さんたちが洋食だったから俺は和食を……」

 カイさんの目が潤んでくる。

「そうなのか、カイが料理を……。元気だったか?」

「ああ、もちろん」

「そちらの方は?」

「真由だ。……人間だよ」

「そうか……人間か……。真由さん」

「は、はい」

「どうか……自分の世界に帰る時まで無事でいてください。私は、後悔している。人間を守られなかったことを」

「そんな、きっと、その方も嬉しかったはずです。面倒を見てもらえて」

「そうだといいんだが……」

「父さん、母さん、そろそろ料理に取り掛からないと時間が無くなる。一緒に、料理をしてもらえるか?」

「ああ、もちろんだよ」

「カイとまさか同じ厨房に立てるなんて、夢みたいだわ」

 ああ、私も家族に会いたい。同じ空気を吸いたい。だから絶対に、生きて元の世界に戻るの。



 料理をしている間、カイさんの表情は柔らかくて両親を見る目はとても優しかった。

 クールに見えるカイさんだけど、きっと両親と離れ離れになってしまってからは人には言えない寂しさを心に抱えて生きて来たのかと思うと、母親が赤ちゃんを抱きしめる時のように、抱擁して愛をあげたくなった。