「でも僕は、もう嫌なんだ。実際に見たわけじゃないけど、人間が殺されるのは。僕についている動物の妖は、捨てられたあとに拾われた家ではそれはもう幸福な時間を過ごしていた。僕は人間が全て悪者だとは思わない。心優しい人もいる。だから、もう、人間が犠牲になるのは嫌なんだ。真由さん、どうか災いを終息させてください、お願いします」

「キキョウさん……。分かりました、約束、します」

「ありがとう」

 その瞬間、キキョウさんが私の体を包む。

 私はどうしたらいいか分からなくて、抱きしめられたまま固まってしまう。

「キキョウくん、真由ちゃんが困ってるよ」

「あ……ごめん。嬉しくて。真由さんの言葉が」

 あどけなくキキョウさんは笑った。 

 大人っぽいって思ったけど、こうして見るとやっぱり私と同じ、思春期の真只中を生きている若者で、少しの親近感がわいて嬉しくなった。