「お待たせ」

 キキョウさんが返ってくると、緑茶の香りが部屋に充満する。

「それじゃあ、災いに関する本、だよね」

 キキョウさんは棚ではなく机の引き出しから二冊の本を出してきた。

「これだよ。あまりなくてごめんね」

「いえ、十分有難いです」

「ああ、でも……。どちらも肝心なことは書いてないんだ。多分知っていると思うけど、『キセキバナ』ってあるだろう? 結局それがどこにあるのかはどの本にも載っていない。ただ、それを奉納する場所とか地図とかはそれに書いてあるから見ると良いよ」

「はい。その……結局、地主に信頼されなければ私は殺される運命になるのでしょうか?」

 もし種を見つけたとしても、花を咲かせられなければなにも意味がない。

「そうだね……。そうじゃないとこの街が滅びる。こんなことを今言うのは多分真由さんにとって良くないことかもしれないけど、事実は伝えておくよ。今までに災いが起きたときにキセキバナを見つけられた人間はいない。でも、それならどうしてこの街が残っているか。……皆、殺されているんだ」

 ここに来る前からなんとなく予想はしていたけれど、やっぱりそれは現実だった。そうだよ、だって、本になるくらいなんだから災いは何度か起きていて、でもこの街はこうして存在しているんだもの。