嘘だろ……俺は失ったのだシルヴィをそしてシルヴィとの時間をこの村での生活をこれから過ごす人生のすべてを全部全部だ……
そこでハッとした、オレは失ったのだの……回復の秘術は失ったものを回復という形で取り戻すならば……俺を基準に回復の秘術を使えばもしかしたらみんな帰ってくるのかもしれない
俺は回復の秘術を発動した。回復の秘術は俺の周りだけに留まらず惑星全域に広がっていった。
◇
「がぼっごぼぼ」
気が付くとオレは回復の泉にいた。命がものすごい勢いで摩耗していくのを感じる。だがここで死ぬわけにはいかない! この回復の泉の中にいるから俺はまだ死んでいないに過ぎない。対価は命だったのだ。俺は、心の中でディーネを呼ぶ。
すると暗い泉の中が光った気がした。光った方に移動するとディーネがいた。
「マスター? あれ、私……あれ?」
水中で混乱しているディーネ、おそらくオレが近づいたことで、オレの持つ回復の秘術空から自動的に契約を結ばれたのだろう。
回復の秘術でみんな生き返るのかと思ったが、村のみんなはあのドラゴンに殺された……いや、命を奪われた。つまり生き返らせるのは不可能だった。それでも俺の失った時間を取り戻すために時間を巻き戻すという形でスキルは発動したのだろう。
そしてオレの思考を読めるディーネはオレを介して未来を思い出したのだろう。
(回復に秘術の対価が命だったみたいだ……命やばい……助けてディーネ)
そう言うとフフッと笑うディーネ
「仕方ないですね命を与えます。こんな例めったに無いんですよ。もしマスターが回復の泉以外で命を対価にしていたら普通に死んでいまいた」
そう言ってディーネがオレにキスをしてきた。俺は失った命を回復してもらい天井を破壊して地上に出た。
スキル、持ち物、記憶。俺だけこっちに全部持ってきたようだ。
「流石です! 流石私のマスターです! あの状況からよく今の状況まで持ってきましたね! 私諦めてました!」
そう言ってディーネが俺に抱擁する。
「放せ! 苦しい!」
「嫌ですよ! 私がマスターの命を救ったんですから少しくらい、いいじゃないですか!」
30分ほど弄ばれやっと解放された。
「マスター私は契約しているから思い出せましたがシルヴィさん、他の村の人は無理ですよ?」
「ああ、わかってる、あの村は解散するべきだ。今の俺、というより子供の俺じゃあ、どんなに頑張っても前回より少し強くなる程度だ、あのドラゴンたちには勝てないし人死が出るくらいなら村を解散させたほうが良い」
ここは、過去だ、オレが回復の泉でおぼれた直後だろう。
「違いますよ?あの泉でマスターはちゃんと半年間溺れています。」
オレの考えを読んだディーネが、オレの勘違いを訂正する。
「え!嘘、マジか……まぁいい時間はあるゆっくり着実にやろう。そろそろここらへんでカインさんと出会う時間だ。だけど合わないほうが良いだろ……もし村人の避難に失敗したら巻き込んで殺すことになる」
「マスターあのベフィスを殺せはいいのでは?」
「いや、あの黒ローブがベフィスは実験対象みたいなことを言っていた。あいつを殺しても無駄だ、今から黒錬金術を止めるというのも無理だ、国の政策になっているから自分で気づかせるしかない」
ゼオンさんが言っていた。ここ二年くらい不作が続いていると、それも全部黒錬金術の所為だろう。シルヴィに黒錬金術の効果が逆効果だったのも、そこら辺に影響しているんだろう。
考え事をしている間にシルヴィと出会った河原まで来た。前と同じようにシルヴィは寂しそうに一人でポツリとしている。
「シルヴィ!」
オレがそう呼ぶとシルヴィは目を見開いてこちらに駆け出してきた。
「エルビス! 生きてたんだね。よかった! よかったよ!」
シルヴィは俺に抱き着きすりすりしてくる。
「ところでそこの綺麗な女も人誰?」
そう、以前と少し違うのはここからだ・・・
オレは、ゼオンから誕生日プレゼントしてもらった保存の鏡をシルヴィに渡す。
「え? なにこれ」
鏡を受け取り覗き込んだ瞬間シルヴィはその瞬間、頭を押さえる
「うぅぅぅ、あれ、えっとあれ? エルビスが川に流されて、それであれ? 今日はエルビスの誕生日であれ? あれ?」
未来の記憶を思い出し現在の記憶とごっちゃになってシルヴィは混乱している。
「マスター? これは……最初から予期していたのですか? こんなものをあらかじめ持っているなんてさすがです」
ディーネは驚きすぎて声がぶるぶるだ。まぁ完全な偶然なんだけどな
「エルビスが小さい!かわいい!」
俺に抱き着いてベタベタし始めるシルヴィ
「シルヴィ……シルヴィも小さいからな」
「え? あれ? 最近大きくなってた最近大きくなってた胸がぺったんこ!」
どうやら胸が大きくなっていたらしい気づかなかった。
「シルヴィ……ここは過去だ、昔の時間だ」
「昔? エルビスが小さくなったんじゃないの?」
「いや違うここは俺たちが6歳の頃の時間軸だ。みんなは未来の事を知らない俺たちだけが知っているんだ。」
「そうなの?」
よくわかっていない顔をしている。
「取り敢えずだ! 最近黒魔種が多かっただろ?」
「うん多かった」
「あれが村を襲ってみんな死んだんだ」
「? さっきまでみんないたよ?」
「だからここは過去だからだ。未来でそういう事が起きる。だから逃げなくちゃいけない。」
少なくとも一年半以内に……村は解散した方がいい、あとシルヴィ、未来と現在がごっちゃになっている。これも何とかしなくては