シルヴィがいるので今日も馬車で街に向かう。門をくぐり抜ける時、門の前に黒錬金術で作った装備で全身を固める門番とすれ違う。
「やっぱり黒錬金術での装備安いやつでもかっこいいな」
シルヴィが俺の顔を覗き込む
「欲しいの? 誕生日だし買ってあげるよ?」
「いやいい、もう貰ったしな」
幼馴染の女の子に装備を買ってもらうなんて、なんかヒモみたいで嫌だ。
「そういえばレイラちゃんも同じ誕生日だよね、祝ってあげないの?」
「今喧嘩みたいなことしてるから……」
「そうなんだ。早く仲直りできるといいね」
シルヴィは知らないからな……あのレイラのやばい一面を
今日の街は何か騒がしいな、町に着いた瞬間にその異様な雰囲気に驚く
いつもの串カツ屋の前でおじさんに聞いてみることにした。
「すみません串カツ2つ、それと街が騒がしいみたいですけど何かあったんですか?」
そう聞くと驚いた顔をする串カツ屋のおじさん
「なんだ坊主この街の人間じゃないのか? 今街は大騒ぎさ、どうやらこの街の周辺でベフィスっていう貴族様の息子が失踪したらしい」
シルヴィを狙っていたあいつが失踪したのか。確か伯爵の息子だったはずだ。大事件だな、なんでここにいたか知らんが……
「へ~あの変態な人いなくなったんだね」
興味がなさそうな声を出すシルヴィというか変態ってなんだ? 知らないぞ。そのエピソード
「具体的になにされたんだ? 変態扱いなんてひどいだろ?」
そう言うとシルヴィが怒って串カツの串をバキバキにした。
「だって私のお風呂覗こうとしたんだよ! 許せないよ!」
俺もあるんだよなぁ覗いたこと……だけどベフィス許せねぇあいつは俺が見つけて締め上げる!
俺たちは歩きながら黒錬金術の店を覗く、最近は鎧も売っているらしい初めに来た時はお守りしかなかったのに、技術の発展が早いな
「エルビス! 買う? かっこいい鎧あるよ?」
「いいってばそのうち自分で買うからさ!」
そう言うと残念そうな顔をするシルヴィ、どれだけおごりたいんだろうか? 将来この子と結婚する男がうらやましい
「く! 想像したら腹立ってきた」
「どうしたの? エルビス?お腹痛いの?」
オレのお腹をさすり始めるシルヴィ、いったい何を勘違いしているんだ。
俺とシルヴィは娼館の前を通る。その先に以前シルヴィの誕生日プレゼントを買ったぬいぐるみ屋があるためだ。
「エルビス! みちゃだめぇ!」
シルヴィが俺の目をふさぐ見えない。見えない!
シルヴィも俺の目をふさぐのに必死で前を見ていない、そのまま俺は娼館のお店の人にぶつかった。
「あら、小さい子ね、寄っていく?」
何で8歳になったばかりの子に娼館に誘ってんだよ!
「だめ! エルビスだめ! だめぇ!」
シルヴィは必死で俺の目と鼻と口をふさいで無理やり娼婦の人から引き離した。
「エルビスの変態! あんな人にデレデレするエルビス嫌い!」
どうしろと言うんだ目をふさがれてぶつかっただけじゃん、取り敢えず謝っとくか
「ごめん」
シルヴィがオレを睨みつける。そしてフッと笑うと
「私のお願い聞いてくれたらいいよ!」
といつもの要求をしてきた。こちらとしてはOKするしかない、OKしないとずっと不機嫌になるからだ。
「わかった一つだけな」
「やった! じゃあ、どうしようかな! あ、じゃあ、エルビスが私に似合う服選んでよ!」
「そんなことならお安い御用さ!」
そのまま、洋服屋へ向かう。店に入ると貴族様対応を受ける、シルヴィの事を知っているのだろう。
「シルヴィ様いつもご利用ありがとうございます。今日は彼氏様と一緒ですか?」
違った、常連客だったみたいだ。シルヴィのかわいい服はいつもこの店で買っているらしいこういう店での対応がわからずシルヴィを見ると真っ赤な顔で固まっていた。
知り合いの店員に彼氏連れと勘違いされたのが恥ずかしかったのだろうか?
「え、エルビス服選んでくれるんでしょ。どれが合うかな?
何がいいのかわからないのでさりげなく店員に伺いながら最終的に白要素が多めの服を買った。シルヴィの金髪には合うだろう。
着衣室から出てきたシルヴィはいつもよりかわいく見える。俺が選んだ服だからかな?
「今日は楽しかった!そろそろ帰ろ?」
シルヴィがそういうのを見て気が付く、外は夕焼けで真っ赤になっていた。
「そうだな、帰ろう」
そして俺とシルヴィは見た。
俺たちの村のある方向に国を揺るがしかねない異常事態が起きているのを……
この時俺はまだ知らなかった。現在進行形で村が崩壊していることにその犯人が失踪したベフィスだったなんて……