転生先は回復の泉の中~苦しくても死ねない地獄を超えた俺は世界最強~

 俺はこの一か月何もできなかった。シルヴィの傷は治したはずなのに、どんどんと黒いあざが広がっていく。それは俺は、それを見る事しかできない。

「なぁシルヴィ起きてくれよ、俺があの時シルヴィをちゃんと守れなかったのが悪かった。俺この一か月毎日魔物倒してお金稼いだんだ。シルヴィに約束していた好きな物も買えるんだ!だから……」

 廊下から足音がした。そして扉が開く音がする。ゼオンさんが入ってきたようだ。

「今日もいたのか、今日も回復の水飲ませたんだろ? カインさんはどうなった?」

「はい、飲ませないと、この黒いあざが広がりますから。 カインさんの方はわかりません」

 そんな俺にゼオンはずっと疑問に思っていたであろう事を聞いてきた。

「その回復の水ってどうやって出したんだ?」

 その言葉を聞いて俺は、はっと気が付いた。この状況の打開策に、なんで気が付かなかったんだ! 呼吸しなくても死なないほどの回復をする泉の水それがあれば治るかもしれない!

 俺はありったけの魔力で回復の水を作りボトルに入れゼオンに渡す。

「しばらくここを出ます! 絶対にシルヴィを治します。この水を毎日飲ませてください!」

 そう言うと俺は回復の泉に向かう準備を始める。リュックに空瓶を何本か入れる。

 最近、黒魔種が増えている。運んでる間に襲われる可能性は高い。警戒していこう。

 さてシルヴィを助けるんだ! そう決意し俺は村を出た。2~3時間歩いたら着く距離のはずだ回復の泉には俺が空けた穴が開いているからすぐわかる。

 門を出て川へ向かう。そこには通常のゴブリンの集団がいた。俺を見つけるといい獲物と言わんばかりにニヤッと、にやつきこちらに来た。

 俺はこの間の件で個人的にゴブリンが大っ嫌いになった! あいつらには容赦しない。

剣を抜き剣圧を満たし火の斬撃波を飛ばした。通常のゴブリン程度ならこれで死ぬ。斬撃波はゴブリンの集団に直撃し無事全滅させた。更に小一時間ほど進むとスケルトンがいた。初めて見る魔物だ。

 スケルトンは骨の魔物だ。黒いってことは黒魔種だろう。初めての魔物だ油断はできない。しかも骨で作った弓を持っている。

 突如スケルトンが恐ろしい速度で弓を射出した。避けた矢は後ろの木に当たり木をなぎ倒した。俺は、超加速を使った。周りの景色が歪むほど早く走ることができた。その速度を維持したままスケルトンを攻撃した。

 固い! 切れない。一旦離れてスキル斬撃波をそのままスケルトンにぶち当てた。そのままの頭蓋骨を叩き割る。

「こんな固い魔物、町の冒険者はどうやって倒しているんだ。全く」

 そう言いながらスケルトンの頭蓋骨は役に立ちそうなので叩いて砕いて採っておくことにする。

 しばらく歩き目的地付近に到着する。ここの木が倒れているのは俺が倒したからだ。ここら辺に穴があるはずなのに無い!

「マスター! 2年半も何を……どこに行っていたのですか! 私探したんですよ!」

 そう言いながら誰かが俺に後ろから抱き着いてきた。

 青髪の15~16の綺麗な青髪の女性が俺に抱き着いている。

「帰りましょう!マスター!」

 目の前の女性がそう言った瞬間、俺は転移した。

「がばば、ごぼぼかはっ」

 こは、回復の泉の中……いや、正式名称は精霊の泉だ。つまり彼女は精霊ということかもしれない。そう言えばここで溺れている時、何かいる気配がしていたがこの子だったのか

 ここの空間には半年もいた。この苦しみにも慣れたもんだ。特に焦ることもなく、シルヴィの為に瓶に回復の泉の水を入れておいた。

 三本ほど入れ終わりそろそろ出ようと思ったが前に開けた穴はふさがっていた。俺が空けた穴を回復させたってことか? どう考えても埋められる穴ではなかったはずだ。

 以前と同じように手に破壊属性を付与して殴ったが固くヒビすら入らない。こんなに硬かったか?

「マスター? 何をしているんですか? 苦しいですよね。こっちに来てください。」

 そう言って精霊が俺を引っ張っていく。

 こいつ俺の事をマスターって言ってるけど、そんな者になった記憶ないぞ?

「何言ってるんですか? 私はマスターのあんなものや、こんなものまでちゃんと処理してたんですよ! お仕えしてなきゃこんなことしませんよ! 全く!」

 心の声を読めるのか?

「そりゃあ私たちは一心同体みたいなものですし。仮の契約しかしていないとはいえそれくらいできますよ」