発見した繭は、全部で十二個、生存者は五名だった。
七名分の髪の毛と遺品は、叔父が空間魔法で収納し、遺体は土の中に埋めることとした。放置しても、一時間後には、ダンジョンに吸収されるが、やはり人として埋葬はするべきだ。
叔父はすぐに移動するべきだと主張したが、俺が埋葬をしたいと我儘を言った。命の危険があるのは理解しているが、やはりそのままにはしておけなかった。
簡易な墓石を作り、手を合わせる。
「ジーク、そろそろ行くよ」
「ヴィリー叔父さん、ありがとう」
「君は、優しい子に育ったね」
頭をポンポンと撫でると、丸太の上に並べている生存者の方へ向かう。さきほど俺が変異種と共になぎ倒した木々が役に立っていた。
「この人数を運ぶのは、苦労するな『浮遊』」
ぼやきながらも、魔法を駆使する姿はさすがだ。数本にまとめた丸太が宙に浮いている。その上には人……実にシュールだ。
「ジーク、この森は早く出たほうがいい。下級ダンジョンでBランクの変異種が出現するとは、異常事態だ。二十階層の階段は、すぐそこだから急ぐよ」
「はい」
俺と叔父は、進む速度を上げるため『倍速』を使用する。森を切り開くため『疾風』を駆使して、『索敵』で二十階層の階段まで進む。
叔父は同時に四種類の魔法を使用しているが、涼しい顔をしている。さすがだなぁーと、目指す人が、すぐそばにいる環境に感謝し、遠いなぁーと、尊敬の眼差しで、見つめる。叔父の背中に一歩でも早く近づけるように、ダンジョン踏破するまでの間、多くのことを学び吸収するんだと目標を定めた。
一時間ほど歩いた先に、二十階層の階段を見つける。階段の幅が、丸太より大きく、そのまま下りても支障がなかったことは、ラッキーだった。
二十階層は、草原だった。
野営ができる場所まで移動すると、丸太を置き、それぞれの容態を確認した。生存者は、金髪少女、侍女、女騎士、男騎士、スキンヘッドの騎士だ。
外傷は、ほぼなく、全員気絶をしているだけだとのことだった。
丸太の上には、一際大きい繭が、一つ置いてあった。
叔父が研究のため、確保したのだ。その中身はスキンヘッドの騎士だった。
コールスパイダーの繭は、生命力を徐々に吸収し、繭を大きくしていく。大きければ、大きいほど、繭の中の生命力が高いということだ。つまり中の人物のレベルが高いことになる。だが、これほど大きな繭が完成することはまずないそうだ。
レベルが高い者ならその前に脱出するので、外傷がないことから、繭に包まれる前に、状態異常であったのだろうと分析していた。
叔父の説明に耳を傾け、大きな繭とスキンヘッドの騎士を交互に見る。
うーん、気になるけど、今はいいや。俺は鑑定の使用を控えている。叔父が既に情報を収集をしていると判断し、無駄な魔力は使用しないように心がけていた。万が一に備え、魔力を極力残しているのだ。といっても、『倍速』と先の戦いで魔力が余り残っていないんだけどね。
それに、この五人が、危険人物なら、叔父が野営場所に連れ帰るはずがないのだ。
そろそろ日が暮れる頃、俺が助けた金髪の少女が最初に目覚めた。
「うぅっん……。ここは……わたくしは……エマ! パル! あっ……」
少女は、急に起き上がったため、体勢を崩す。
慌てて駆け寄り、上体を起こし支える。白い耳がピコピコと動いている。
補足で付け加えておくと、少女には、白い耳と尻尾があった。繭から出した時に気がついたが、叔父の指示で詮索はしない。
「ありがとうございます」
「立てますか?」
「はい。立てます」
俺は少女をエスコートしながら、高貴な身分であると確信した。戸惑いなくエスコートされる様と、背筋をピンと伸ばし歩く姿勢は、優雅で品がある。手入れされた金髪の髪と琥珀の瞳、きめ細やかな白い肌に映える朱、耳と尻尾つきのまごうことなき美少女である。
焚き火の前に用意された椅子に案内し、果樹水を手渡すと、一瞬躊躇したが、コクコクと飲みほした。
ついでに、キャラメルも差し出す。
「あの、これは?」
「キャラメルってお菓子だよ。甘いもの食べると落ち着くよ」
「ありがとうございます」
昨日、空間魔法から魔法鞄へ移しておいて正解だった。
少女はキャラメルを口にすると、目を見開き、破顔する。うん。笑顔は最高の褒め言葉です。
「新作かい?」
「はい。叔父さんもどうぞ」
「うん、美味しい! 口の中に入れた瞬間、溶けるんだね。きみの発想力には、毎回驚かされるよ」
「貴方がお作りになったのですか?」
「いいえ、料理人ですよ。ぼくは、アイデアを提供しただけです」
「すごく美味しいです」
「まだあるからどうぞ」
「ありがとうございます」
少女の耳と尻尾がパタパタと嬉しい! を表現している。うん。ハクと同じだ。
俺と叔父と少女、まったりとした時間が流れていた。
七名分の髪の毛と遺品は、叔父が空間魔法で収納し、遺体は土の中に埋めることとした。放置しても、一時間後には、ダンジョンに吸収されるが、やはり人として埋葬はするべきだ。
叔父はすぐに移動するべきだと主張したが、俺が埋葬をしたいと我儘を言った。命の危険があるのは理解しているが、やはりそのままにはしておけなかった。
簡易な墓石を作り、手を合わせる。
「ジーク、そろそろ行くよ」
「ヴィリー叔父さん、ありがとう」
「君は、優しい子に育ったね」
頭をポンポンと撫でると、丸太の上に並べている生存者の方へ向かう。さきほど俺が変異種と共になぎ倒した木々が役に立っていた。
「この人数を運ぶのは、苦労するな『浮遊』」
ぼやきながらも、魔法を駆使する姿はさすがだ。数本にまとめた丸太が宙に浮いている。その上には人……実にシュールだ。
「ジーク、この森は早く出たほうがいい。下級ダンジョンでBランクの変異種が出現するとは、異常事態だ。二十階層の階段は、すぐそこだから急ぐよ」
「はい」
俺と叔父は、進む速度を上げるため『倍速』を使用する。森を切り開くため『疾風』を駆使して、『索敵』で二十階層の階段まで進む。
叔父は同時に四種類の魔法を使用しているが、涼しい顔をしている。さすがだなぁーと、目指す人が、すぐそばにいる環境に感謝し、遠いなぁーと、尊敬の眼差しで、見つめる。叔父の背中に一歩でも早く近づけるように、ダンジョン踏破するまでの間、多くのことを学び吸収するんだと目標を定めた。
一時間ほど歩いた先に、二十階層の階段を見つける。階段の幅が、丸太より大きく、そのまま下りても支障がなかったことは、ラッキーだった。
二十階層は、草原だった。
野営ができる場所まで移動すると、丸太を置き、それぞれの容態を確認した。生存者は、金髪少女、侍女、女騎士、男騎士、スキンヘッドの騎士だ。
外傷は、ほぼなく、全員気絶をしているだけだとのことだった。
丸太の上には、一際大きい繭が、一つ置いてあった。
叔父が研究のため、確保したのだ。その中身はスキンヘッドの騎士だった。
コールスパイダーの繭は、生命力を徐々に吸収し、繭を大きくしていく。大きければ、大きいほど、繭の中の生命力が高いということだ。つまり中の人物のレベルが高いことになる。だが、これほど大きな繭が完成することはまずないそうだ。
レベルが高い者ならその前に脱出するので、外傷がないことから、繭に包まれる前に、状態異常であったのだろうと分析していた。
叔父の説明に耳を傾け、大きな繭とスキンヘッドの騎士を交互に見る。
うーん、気になるけど、今はいいや。俺は鑑定の使用を控えている。叔父が既に情報を収集をしていると判断し、無駄な魔力は使用しないように心がけていた。万が一に備え、魔力を極力残しているのだ。といっても、『倍速』と先の戦いで魔力が余り残っていないんだけどね。
それに、この五人が、危険人物なら、叔父が野営場所に連れ帰るはずがないのだ。
そろそろ日が暮れる頃、俺が助けた金髪の少女が最初に目覚めた。
「うぅっん……。ここは……わたくしは……エマ! パル! あっ……」
少女は、急に起き上がったため、体勢を崩す。
慌てて駆け寄り、上体を起こし支える。白い耳がピコピコと動いている。
補足で付け加えておくと、少女には、白い耳と尻尾があった。繭から出した時に気がついたが、叔父の指示で詮索はしない。
「ありがとうございます」
「立てますか?」
「はい。立てます」
俺は少女をエスコートしながら、高貴な身分であると確信した。戸惑いなくエスコートされる様と、背筋をピンと伸ばし歩く姿勢は、優雅で品がある。手入れされた金髪の髪と琥珀の瞳、きめ細やかな白い肌に映える朱、耳と尻尾つきのまごうことなき美少女である。
焚き火の前に用意された椅子に案内し、果樹水を手渡すと、一瞬躊躇したが、コクコクと飲みほした。
ついでに、キャラメルも差し出す。
「あの、これは?」
「キャラメルってお菓子だよ。甘いもの食べると落ち着くよ」
「ありがとうございます」
昨日、空間魔法から魔法鞄へ移しておいて正解だった。
少女はキャラメルを口にすると、目を見開き、破顔する。うん。笑顔は最高の褒め言葉です。
「新作かい?」
「はい。叔父さんもどうぞ」
「うん、美味しい! 口の中に入れた瞬間、溶けるんだね。きみの発想力には、毎回驚かされるよ」
「貴方がお作りになったのですか?」
「いいえ、料理人ですよ。ぼくは、アイデアを提供しただけです」
「すごく美味しいです」
「まだあるからどうぞ」
「ありがとうございます」
少女の耳と尻尾がパタパタと嬉しい! を表現している。うん。ハクと同じだ。
俺と叔父と少女、まったりとした時間が流れていた。