「リア、体調はどうだ」
この渋い声は、俺の父、ギルベルト・フォン・アーベル。
父のステータスは既に『鑑定』で確認済みである。
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ギルベルト・フォン・アーベル 男 37才
種族:人間
職業:侯爵、第一騎士団副団長
Lv:57
HP:493/493
MP:135/135
魔力:145
攻撃:392
防御:403
敏捷:412
運:102
魔属性:火・土・炎・雷
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侯爵であり、第一騎士団副団長でもある。
実力は折り紙つき、将来の総帥候補で、近々団長に昇進することが決まっている。
この情報は、ヘルプ機能からである。
ヘルプ機能の意志? あれは目下調査中です。まぁ調査という名の放棄ですけどねー。
それよりも『鑑定』でヘルプ機能が使えたのには驚いた。『鑑定眼』の機能だと思っていたよ。
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特例です。
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だそうです。
もう突っ込まない。無駄な努力はしない。
鑑定の消費MPは5、鑑定眼の消費MP50と比べると、かなり使い勝手がいい。
このMP差は情報量。鑑定はある程度の情報。鑑定眼はすべての情報と詳細な内容となる。
ちなみに俺の鑑定のスキルLvは、鑑定Lv10に相当する。上位スキル所持のため、下位スキルは取得可能条件Lvが使えるようだ。
調子に乗り、視界に入ったもの全てを鑑定した結果、情報がパンクした。
記憶に自信があっても、これほどの情報量は、さすがに無理だ。
さてどうするかと思案していたら、ヘルプ機能から救いの手が差し伸べられる。
鑑定したものは、履歴に保存されるとのことだ。
はぁーと、思わず感嘆する。死角なしのスキルだと感心していると、これも特例とのことだった。やっぱりね。
結論としては、鑑定Lv10の情報が確認でき、消費MPも少なく、特例でヘルプ機能が使える鑑定を普段利用することにした。
「ギル、とてもいいわ」
うふふっと、可愛らしい声が、頭上で響く。
申告が遅れましたが、俺は幸せの国の中にいます。赤ん坊生活で精神を削られている俺の唯一の癒し時間だが、毎回毎回謀ったように、子煩悩で愛妻家でもある父ギルベルトが訪れる。
邪魔だとは少しも思ってませんよ。えぇ、本心ですとも。ただこの正確さには驚きますけどね。
多忙な執務の合間に、抜けて来るようで、執事ハンスに「やはりここでしたか」と、強制連行されるのは日常。
「ジークも元気そうだな」
父上、今朝もお会いしましたよ。
アンナが止めているにもかかわらず、俺を抱き上げ、無言で上下に振り、怒られていましたね。
おそらく、高い高いをしたんだと思いますが、まだ首すわってませんから! 頭がもげて死ぬかと思いました。反省してますか? してますよね?! 身動きができれば即逃亡してますからね!
ゴツゴツした手が、遠慮がちに頬を撫でる。
まぁ悪くはない。欲を言えば、その繊細さを今朝だして欲しかった。
父上は、慎重派らしいが、母上や俺に関しては、たちまち我を忘れるようだ。
頭上で二つの影が重なる。
視界見えてません。邪魔もしません。ただ、このダダ漏れの甘い空気は勘弁してほしい。
夫婦仲が良いのは、もちろんいいことだ。
念のため、もう一度言う。
夫婦仲が良いのは、いいことだ。
だが! だが! だがぁー! 俺のいないところでやってくれーー!
俺の心の叫びを無視して、両親はとても仲睦まじく、甘々の雰囲気のまま、他愛もない話をする。これも普段通りである。
そして俺は、両親の会話に耳を傾けるような、無粋な真似はしない。まぁ眠気に勝てないので、物理的にできないんだけどね。
例の如くうつらうつらし始める。両親の会話は子守り歌で、幸せの国の心地良さが、さらに強固な眠りを誘う。
気づくと九割八分が、ベッドの上だ。マジ完敗です。
「ジークも安定してきたし、鑑定はどうするの?」
「ゲルトの件で鑑定師は信用できない。ヴィリバルトに頼んでいる」
「そう。ヴィリーなら安心ね」
「あぁ。ヴィリバルトはディライア王国を訪問中だ。帰国後の鑑定となる。早くて一ヶ月後だな」
「サンドラ様のご出産がもうすぐだものね」
「出産後の経過連絡の任務と鑑定も請負っているようだ」
「鑑定眼持ちは大変ね……」
「リアが気にすることではないさ」
幸せの国に滞在中ですが、今の会話は聞き逃しませんでした。
完落ち寸前のところで、戻ってきました。
はい、俺頑張った。