俺がガラス石を見て、一人の世界に耽っている内に、ハクは魔力循環を成功させていた。

「ガルゥーー!(できたーー!)」
「うん、問題ないね」

 叔父が笑顔で肯定していた。
 ハクは嬉しそうに俺たちの回りを走っている。

 あっ見逃した……。

 俺としたことが、目先の利益にとらわれ、ハクの魔法デビューを見逃してしまった。
 いやまて、魔法はまだ使ってないから、魔法デビューではないはずだ。
 そう自分を納得させて、叔父とハクの会話に集中する。

「次は魔法だね、ハク。魔力循環を高めながら使いたい魔法をイメージして使用してみなさい」
「ガゥ(わかった)」

 ハクは、魔法を試そうとするが、途中で魔力循環を止めてしまう。
 項垂れながら、叔父に訴える。

「ガルゥー(イメージわからない)」

 そうだった。魔獣の赤子は、親の魔法を見て覚える。
 聖獣もおそらく同じではなかろうか。
 人のように、本などで予め知識を備え、想像するのではなく、実戦などで身体に直接覚えさせ、本能で魔法を使用するのではないか。
 叔父もそれに気づいたようで、項垂れているハクの頭を優しく撫でる。

「ハクごめんね。私が間違っていたね。まず私が魔法を使うから見てなさい。雷は危ないから氷魔法かな。ハク見てなさい『雪氷』」

 叔父が、氷魔法の初級の『雪氷』を使う。
 だいぶ手加減をしているようで、数十ほどの小さな氷玉が、パタパタと一メートル先に落ちていく。
 その一つを拾い、ハクに見せる。

「わかるかい? 『雪氷』は雪からできる氷なんだ。このような氷玉になる」
「ガル?(ユキ?)」
「あぁそうだね。雪を知らないんだね。んーー。水蒸気の説明をすると小難しくなるな。んー……。ハク雨はわかるかい?」
「ガウ!(わかる!)」
「えらいね。雨は空から水が降るね」
「ガウ!(そうだ!)」
「雨が降るように雪も空から降るんだ。雪はね、水ではなく氷の結晶で……そうだ。ハクこれを見なさい」

 叔父はそう言うと、氷玉を短剣で器用に削り、粉雪を作って、ハクに降りそそぐ。
 手作り雪とはおそれいった。
 だが叔父よ。魔法で雪を出せたのではないですかね。
 叔父とハクの会話は続く。なぜか会話が成立しているんですよね。

「これが雪で、空から降ってくる。その雪を固めたものが氷玉だ。わかるかい?」
「ガウ!(わかる!)」
「えらいね。では、そのイメージで『雪氷』を使用してみなさい」
「ガウ!(わかった!)」

 叔父よ。魔獣は見て覚える実戦タイプですよ。
 人のようにイメージでの魔法は、ムチャ振りではないですかね。
 いくら人語を理解している賢いハクでも難しいのでは……。
 俺が心の中でブツブツと呟いていると、ハクの目の前に小粒の氷玉が落ちた。
 なんと『雪氷』が成功している。

 えっ! 成功しているーー! 一発成功!
 おぉーー、今の説明でイメージができていたのか。ハク天才!
 うちの子、かわいいだけじゃなく、天才だった! 

「ガルゥ!(できた!)」
「上手にできたね。この氷玉を敵にめがけて撃つと攻撃できる。ただしそれには魔力制御が必要となるんだ。魔力制御は、魔力循環を上手くできるように修練すれば取得可能だから、当面の目標は氷魔法と魔力制御の取得だね」
「ガゥ(わかった)」

 色々あった叔父との魔法修練を終え、ハクと一緒にベッドに潜る。
 今日は一日がとても長かったと振り返り、ハッとした。
 俺『浄化』使えるんじゃねぇーー!?
 それに気づいたのは、その日の夜になってからだった。