俺たちが、叔父に感謝を伝えている間に、マリー姉様は戻ってきた。
 姉様の行動の速さには驚くが、スイッチが入った姉様は誰にも止められないので、ここはそっとしておく。
 手には、真珠の玉ように白く綺麗な五センチメートルほどの丸い石があった。
 俺の視線に気づいたマリー姉様は、そっと手のひらに『浄化の石』を置いてくれた。

「姉様?」
「気になるのでしょう? 使用する前に気の済むまで見分なさい。叔父様、それぐらいの時間はありますよね」
「あぁ、大丈夫だよ。一刻を争う事態ではないからね」
「ありがとうございます」

 二人の好意に感謝しつつ、手元にある『浄化の石』をながめる。
 遠目では、真っ白に見えたけど、小さく渦が巻いている。
 これは魔法の痕跡なのかもしれない。気になるけれど、それはあとでだ。
 鑑定だけして、あとで情報を確認しよう。
 叔父の手のひらに『浄化の石』を渡す。

「もういいのかい?」
「はい。堪能しました」
「ジークの探究心は、誰に似たのかな」
「叔父様でしょ。叔父様の魔術の研究。研究員たちからの悲鳴が聞こえるほど大変と伺いましたわ」
「また大袈裟だね」
「大袈裟ではないと思いますわ。お茶会などでも噂が上がっております。少し控えて」
「マリー。その話はまたにしよう」

 雲行きが怪しくなったのか、叔父が会話を切り上げる。
 そして、手のひらにある『浄化の石』をハクの額につけ『浄化』と発した。
 ハクの身体に白い光が降りそそぐ、まるで天使のはしごのように幻想的な光景だった。
 すぐそばにいたマリー姉様も「きれいね」と見惚れている。
 白い光が完全に消え、ハクの体調を確認する。
 特に変わった様子もなく、違和感もないことに一安心した。

 使用した『浄化の石』は、色が抜け透明なガラス玉のようになった。
 叔父曰く、このガラス玉が魔道具で『ガラス石』と呼ばれ、魔法を収納することができ、魔法によって色が変わるそうだ。
 またリンネ製のガラス石は、他のガラス石と比べ耐久がよく何度も使えるため大人気で品薄状態らしい。
 ただし『移動魔法』を収納した『移動石』は、使った瞬間に割れるそうだ。
 他にも高度な魔法を収納した場合、割れる率が高いとのことだった。
 マリー姉様にお願いして『ガラス石』いただきました。
 あとで鑑定して、ガラス石の魔道具を作る予定だ。
 材料や方法は、ヘルプ機能でなんとかなるっしょ。
 フッフッフ、楽しみだ。