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「聖獣との契約って、まずいよなぁ……」

 俺はそう呟きつつ、膝の上にいる白のモフモフを撫でていた。
 ゴロゴロと喉を鳴らす白虎。見た目はホワイトタイガーの赤ちゃんだ。
 んー……。モフモフは正義だ!
 考えることを放棄してすぐ、白虎に膝の上に乗るようお願いした。
 そして毛をモフることに了承してもらい、堪能すること一時間。そろそろ現実を見ることとした。
 頭を整理するには、癒しの時間も必要なのだ。

「マリー姉様に相談するしかないよな。魔獣の赤子でとおせるかな。いやそれしか選択肢はないね。外見上、魔物は無理だ。魔獣で押し通すとして、魔契約は隠すべきだね」
「ガルゥ?(マリー?)」
「俺の姉様だよ。とても優しくて、可愛い人だよ。ただブラコンが異常だけどね……」
「ガルゥ?(ブラコン?)」
「えーーと、俺のことが好きすぎることだよ。説明、間違ってはないはず」
「ガルゥ!(ジークベルト、好き!)」
「えっ、ありがとう。俺も好きだよ。そういえば白虎って名前あるのかな?」
「ガルゥ?(名前?)」
「じゃ、ぼくが付けていいかな」
「ガウッ!(いいぞ!)」
「よかった。じつはもう決めていたんだ。『ハク』ってどうかな」
「ガゥ!(ハクだ!)」
「気に入ってもらえてよかったよ」

 ハクは、尻尾をパタパタと動かして、俺の身体にすり寄ってくる。
 名前が相当お気に召したようだ。
 よかった。ボキャブラリーがないって否定されたらどうしようかと思った。
 真っ先に頭に浮かんだ名前だった。前世の記憶がよぎる。これも運命なのかな。

「ハク」
「ガルゥ?(どうしたの?)」
「ハクは、今日から俺の相棒だ」
「ガウッ!(相棒!)」
「ただ一緒に過ごすには、俺たちの世界のルールに合わせてもらうよ」
「ガウッ!(まかせろ!)」
「ありがとう。まず俺とハクの契約は秘密だ。そしてハクが白虎であることは絶対にバレてはいけない」
「ガルゥ?(どうしてだ?)」

 ハクにとっては思ってもいなかった言葉だったのだろう。
 上目遣いで俺を見ながら、コテンと首を傾けた。
 その仕草に、俺は悶絶する。
 なにこの子。あざとっ! めちゃくちゃかわいい! かわいすぎる! 
 あぁもう、かわいいも正義だ!

「ハクは、稀少な聖獣なんだ。聖獣だとわかれば多くの人がハクを求めてしまう。今回のように強い人がハクを無理矢理連れて行くかもしれない。今の俺の力では、守ってやることができないんだ」
「ガウゥ(ハクもよわい)」
「うん。だから二人で強くなろう!」
「ガウッ!(強くなる!)」
「それでね、ハクの見た目が魔獣のブラックキャットに似ているんだ。だからブラックキャットとして姉様たちに紹介するね。ただブラックキャットは、毛が黒いので、特殊変異で毛が白いってことにしようと思う」
「ガゥ!(わかった!)」
「うん。まずはマリー姉様の説得だよ。頑張ろうね、ハク!」
「ガウッ!(がんばる!)」