『白狩り』は、アーベル家総出のバックアップ体制でした。
三歳の幼児に(本来は四歳)ホワイトラビットの単独討伐は無理である。
そのため冒険者などを雇い、ホワイトラビットをある程度弱らせて、止めを刺すのだが、アーベル家は、冒険者を雇う必要はない。
騎士団副団長の父上、魔術団隊長のチート叔父、騎士団への入団が内定したアル兄さん、忍者のテオ兄さん、光魔法が得意なマリー姉様が参加しているのだ。祖母が風邪を引いたため、残念ながら欠席となった、元近衛騎士団団長の祖父も参加する予定だった。
過剰戦力である。ホワイトラビットに相当な過剰戦力である。
結果、手加減してもホワイトラビットを瞬殺してしまう状況に陥った。
この中で一番弱いマリー姉様までもが、瞬殺だった。
『どんな家族やねん!!』と、心の中で叫んだわ!
微妙な空気が漂う中、弱らせることをあきらめた一家は、そのまま捕縛へと方向転換した。
魔法で捕縛し固定したホワイトラビットを俺の前に置き、それを短剣で刺すことになった。
俺のお仕事は、上げ膳据え膳の末、短剣で止めを刺すだけでした。
しれっと、四匹目を仕留めたところで「レベルが上がりました」と伝える。
周囲が喜んでいる中、内情を把握しているテオ兄さんは、複雑そうな顔をしていた。
テオ兄さん、ごめん。この借りは必ず返すので、今は我慢してください。
あの後すぐに、ニコライとテオ兄さんは、ゴブリンを殲滅した。
白の森で、ゴブリンが大量発生するのは珍しいことだ。念のため、冒険者ギルドに報告することになり、ニコライが俺に了承をとる。
約束の履行に反するため、律儀に、了承をとりにきたのだ。
当然のことなので、即了承するが、心底申し訳なさそうに謝罪を口にする。
面白いよなぁー、この人。
行動と中身が一致していないんだよなぁ。
クソ真面目なくせに不器用で、自覚がないのも、好感が持てる。
家族と屋敷の者以外で、初めて接触した人が、ニコライでよかったよ。
結局ニコライが、俺の魔力値の異常に気づいたかは、わからないけれど、気づいても、気づかないふりをしそうだ。
そういえば、ニコライが、魔物討伐に行く度に「チビは、一緒じゃないのか?」と、背後をチラチラ確認して聞くそうだ。
その様子と俺がいないことに落胆する姿が、あまりにも可笑しく、毎回笑いを抑えるのに苦労するそうだ。
あと『灯火』に感化されたようで、初級魔法を実戦で試しているようだ。
「ニコライは、ジークが大変気にいったようだね。ジークは罪作りな男だね」と、テオ兄さんが、とても楽しげに話していた。
その表現はどうかと思うが、二人の迷惑でなければ、是非とも同行をさせてもらおう。
その時は、マリー姉様対策を完全にして、魔物討伐に挑むんだ。