光魔法を取得した日からスキルLvを上げるため、毎日MPが枯渇するまで『光明』を実行した。
 俺には、時間だけはあるからね。
 LvUPはなかなか難しく、光魔法Lv2になるまで、数百回ほど『光明』を成功させた。
 苦労したぜ。

「最近のジークベルト様は、大人しいですね。アンナさん」
「奥様の本がいたく気に入っているようなの。絵本をお持ちしたのだけど興味を示さないのよ」
「ジークベルト様は、奥様が大好きですものね」

 母上大好きっ子ってバレてるよ。
 侍女たちよ。期待を裏切って申し訳ないが、そろそろ次の魔法書を読みたいのだ。
 できれば、空間魔法!
 今から修練すれば『移動』の魔法がそうそうに使えるはず。
 俺の部屋にある本棚は魔法関連の書物が多く保管されている。
 目指すは本棚! 無属性の初級魔法の本!

 侍女たちが退出して、しばらく様子を窺う。
 うん。もう大丈夫だろ。
 今からだと、夕食の時間まで侍女たちは訪れない。

 時は満ちた。作戦開始!

 ソファへダイブ!
 このダイブする瞬間が一番緊張する。
 着地を失敗したことはまだないが、失敗したら床に直撃だ。
 想像するだけでも、痛いっ。
 使えるようになった『癒し』の魔法で回復すればいいのだが、痛いのはやはり嫌だ。
 それに大惨事になったら大変だ。
 まぁ『幸運者』が守ってくれると勝手に確信しているんだけどね。

 ソファから床へは、後ろから慎重に降りて……よし!
 前方よーし。左右敵なーし。
 目指すは本棚! 前進あるのみ!

 …………
 …………
 …………

 ハイハイ中です。
 しばらくお待ち下さい。

 …………
 …………
 …………

 途中、障害物の机があるが、俺には関係ない。
 机の下を華麗にスルー。
 目的地! 隊長! 目的地が近づいて参りました。
 あと数ハイハイのところで、突然、身体が浮いた。

「ジークベルト様、お夕食のお時間まで寝ましょうね」

 なぬっ?! なっ、なななぜっ、なぜここにいるアンナ!
 思わぬ伏兵に驚く。
 本棚が……本棚が遠のいて行く…………。
 定位置に戻された俺はアンナを軽く睨みつける。

「あぅ」
「可愛い顔してもだめですよ。本日は夜に奥様と旦那様が訪れる予定ですので、たくさん寝ておきましょうね」

 柔らかい布団を掛けられ、トントントンとリズムよく身体をたたく。
 絶妙なトントンだが、そんなことで俺は寝ないぞ。
 魔法書の確保は、今日はあきらめるとして、光魔法の修練だ。
 んー? ん? んん! こっ、この布団は!
 最終兵器『子供用安眠布団』ではないかっ!
 アンナ! 魔道具を使うなんて卑怯だぞ。
 くっ、寝るものか……。
 ね……ねてたまる……か。ねっ……ねな……い……ぞ…………。


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 子供用安眠布団
 効果:安眠
 説明:あら不思議! どんなお子様も布団を掛けただけでグッスリ安眠!
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 その日から、侍女たち、いやアンナとの勝負が始まった。
 そして今日も挑む!
 空間魔法の取得を目指して!