んーー。と伸びをして、馴れ親しんだ布団の感触に屋敷へ帰って来たのだと実感する。
 足元で丸くなって寝ているハクと、枕元にいるスラを起こさないよう、そーっと、ベットから降りる。
 部屋内が暗い。外は明るいので起床時間はとうに過ぎているはずだが、カーテンが閉まっている。
 侍女たちの配慮に感謝しつつ、ソファに腰を掛ける。テーブルの上に用意された冷えた水をコップに移し、ゴクゴクと喉の渇きをいやすと、思わずため息が出た。
 昨日は、精神的にも肉体的にも疲れて、倒れるようにベットに身を沈めた。
 その原因を再確認するため「ステータス表示」と唱える。
 表示された内容を見て、夢ではなかったと、項垂れた。

 称号、小さな詐欺師。
 体は子供、中身は大人? 容姿は美少女! なのに性別男。
 生まれた性別間違えているぞ!
 小さな詐欺師……なんちゃって。

 説明文も含めて、突っ込みどころ満載すぎる。
『なんちゃって』とか、説明文にいるの?
 この称号は、隠し部屋の階下の先で取得したのだ。
 そこには、俺の身長の三倍以上はある巨大な生死案内人像があり、全員で協力してガラポンを回した結果、各々に不名誉な称号がついたのだ。

 小さな詐欺師
 隠れブラコン
 金髪の筋肉馬鹿
 究極のドジっ子
 偽りの王女
 最強モフモフ
 食い意地の塊

 誰がどの称号を付与されたのか、だいたいの見当はつくと思う。
 称号名はあれだが、すべての称号に多少なりとも効果が付与されていた。
 だけど、一部を除けば、人には知られたくない称号ではある。

 小さな詐欺師の効果は、能力などで見た目と大きく違いがあっても、疑問を持たれないそうだ。
 裏迷宮の主って、ほんと性格悪いけど、この称号は今の俺にピッタリだ。
 子供の間だけの限定称号なのかどうかは、ヘルプ機能でもわからないそうだ。
 ハクとスラもそれぞれ称号をえた。
 ハクは『最強モフモフ』、スラは『食い意地の塊』だ。
 ハクの『最強モフモフ』は、触れ合うことで、ハクの好感度が少し上がり、癒されるそうだ。
 スラの『食い意地の塊』は、味覚が少し上がる効果があるようだ。
 絶妙なネーミングセンスだと思う。
 個体を認識して、称号名つけいる。
 手の込んだ悪戯だけど、効果も悪いものではないんだよね。微妙なんだけどね。
 ただこれは、裏迷宮の到達ボーナスではなかった。
 ヘルプ機能の調査で、いろいろあったが本物の到達ボーナスを俺たちは取得できた。
 俺とハクは『獲得経験値倍増Lv-のスキル玉』を獲得した。
 スラは『守護のアミュレット』を獲得したが、俺に譲渡してくれた。
 食べ物、オークの肉以外は、興味がないようで、かなり雑な扱いだった。
 その性能はとてもいいものなんだけどね。

 **********************
 守護のアミュレット
 効果:呪を10%の確率で回避
 説明:呪魔法の状態異常を10%の確率で回避する。
 **********************

 代わりにスラには、オークの肉塩胡椒味を献上したよ。
 もちろん、ハクにもあげたよ。

 ニコライは『魔法腕輪』、テオ兄さんは『隠密のスキル玉』を獲得した。
『隠蔽マント』を獲得したディアーナが、めずらしく戸惑った表情を見せた。
 隠蔽マントをじっと見つめ、なにかを呟いていたが、その声は俺には聞こえなかった。
 なにかあれば、ディアーナから話してくれるだろう。
 そしてエマは期待を裏切らない。
『黄金のタワシ』を獲得した。
 エマは、黄金のタワシを持って、飛び跳ねて喜んでいた。
 またタワシで落ち込むかとも思ったが、思いの外、本人が喜んでいた。
 全てが金なので相当な価値があるのだ。
 一般人から考えれば、かなりの収入だ。これほど喜んでもおかしくない。
 はて、お給金少ないのだろうか……と、余計な心配をすると『滅相もございません。アーベル家の給金は、他家と比べても格段に高いです』と、ここにはいないはずのアンナの声が聞こえた気がした。
 裏迷宮の到達ボーナスは、満足いく品だったが、それまでの経緯がさんざんだった。
 プラマイゼロ? いや精神的苦痛に加え、肉体的苦痛も考えれば、マイナス?
 裏迷宮踏破するたびに、不名誉な称号を獲得することも考えれば、ダブルでのマイナスだった。
 裏迷宮の踏破に喜ぶどころか、心に打撃を残し『アン・フェンガーの迷宮』をあとにしたのだった。