「何事だ!」

「ロボの合体が始まりました!」

「止めろ」

「無理です!」

からくり仕掛けのようなそのシステムは、移送路を伝い落下スピードを利用して、迅速な合体を目的としている。

一度始まってしまえば、誰にも止められない。

操縦室の横を巨大パーツは落下していく。

その轟音が壁伝いに響く。

「あと10分、10分でいい。その間に合体を止める方法を作り出せ」

広場に集まり始めた市民を、警視庁職員が移動させていた。

爆発物処理班を装った部隊が展開するその足元では、すでに合体が始まっている。

庁舎を揺るがす振動に、群衆は冷静さを失った。

「どうすんだよ!」

次々とパーツが通り過ぎてゆく。

その過程が丁寧にモニターされている。

緻密に計算されたそのプログラムは、残り8分での合体完了を告げていた。

各所で始まったパーツの移動は、地下のロボット合体収納庫を目指す。

「……やれと言われれば、出来なくてもやるんだろ……」

そうだ。

やるんだ。

俺は指をキーボードに乗せた。

それに触れた指先が、脳に指示を求めている。

画面に表示されているのは、旧式の操作マニュアルだ。

ページをめくる。

あぁ、隊長の言った通りだ。

どこをどう操作しても、全て弾かれる。

何も言うことを聞いてくれない。

こんなもの、何の参考にもならないじゃないか。

どうして隊長は、あの隊長が、こんな無意味な仕事を俺に……。

ふとマニュアルページの一点に、視力の全焦点は合った。

「隊長! ロボット左足かかと部分、緊急非常停止ボタンがあります!」

「場所は?」

「地下駐車場、2B15のA、壁の中!」

通信が切れる。

「俺たちも行こう」

立ち上がろうとして、アラームが鳴った。

「操縦室、移動を開始します。シートベルトを着用してください」

ガタリと部屋ごと前方に移動した。

合体進行画面に映る操縦室が、オレンジに変わっている。

それはゆっくりと移送路に移動すると、突然落下を始めた。

操縦桿が座席の下から現れる。