「嘘……?俺は、一度も既婚者だと認めた覚えはないが?」

 はぁっ!?いや…確かに社長は、一度も既婚者だと認めた事などない。
だが、その代わり否定もしなかった。
 あ、だから奥さんや不倫の話しになると聞いていなかったのは、ワザと話題を逸らしたってこと!?
 だとしたらこの男は、確信犯ってことよね?
ゆ、許せない……。

 全身の怒りが頂点に達した。
私の苦労を何だと思っているのよ!?
 今すぐでも返してほしい……。

「社長……あなたは、どうしていつもそうなんですか!?
 信じられない……さっさと真実を言ってくれたら
こんな苦労もしなかったのに」

 そもそもなんで、そんな理由で
私が振り回されないとならないのよ!?

「え~真実を言ったら楽しみなくなるじゃん。
 俺…夏希と結婚したいが愛人としての
シチュエーションをもっと楽しみたい。
 どれもこれもお前を愛するがために起こした行動だ。
言っただろう?俺の夏希に対する愛は、海より深いって」

 社長は、キッパリとそう言い切った。
はぁっ?深過ぎて何処かに漂流しちゃってますけど……!?

「どちらもお断りします。やるなら1人でやって下さい!!」

 ビシッと笑顔で断った。
というか反省する気なんてないじゃん!!

「何でだよ!?お前……俺のこと好きではないのか?」

「好きですよ。ですが、好きでもしていい事と
悪い事の区別ぐらいつけて下さい」

「え~夏希のドケチ。いいじゃん。俺と結婚しろよ~!!」

「遠慮します!」

 そう言うと私は、そのまま立ち去った。
すると社長は、慌てて追いかけてきた。
 簡単に結婚なんかしてやるものか!!
社長……。今夜あなたを殴ります!
 社長の溺愛ぶりにこれからも悩まされるのだった。