私は、迷っていた。
 慰安旅行でも、不倫旅行でも社長と2人で行けるなんて夢のようだ。
 家族が居る社長には、無理だと諦めていたから
心の中では……行きたいと願っている。
 すでに不倫への道を踏み入れてしまっていた。

 その後も社長は、あまりにも楽しそうにパンフレットを広げて
見ているからそれ以上言えずに旅行の日になってしまう。
 待ち合わせ時間になりアパートの外で待っていると社長の車がきた。
 相変わらず高そうな高級車だった。

「おはよう。夏希」

「おはようございます。社長」

深々と頭を下げた。
 社長は、私のカバンを車のトランクに積むと車に乗り込み旅館まで走った。

 チラッと運転する社長を覗いてみた。
何やかんやと言いながらも運転する社長は、とても素敵だ。
 今日は、サングラスをかけていて私服姿だ。カッコいい……。
心臓がドキドキと高鳴ってしまう。

「夏希。言い忘れていたが旅館では、新婚夫婦って事になっているからな」

「はぁ?また、何でですか!?」

「そっちの方がややこしくないからな。
 何だ?極秘の訳あり不倫カップル設定の方が良かったか?
まぁ俺は、そっちの方が萌えるんだがな」

 そう言いながら社長は、ニヤリと笑った。
いや…むしろそっちの方が嫌です。
 この人を喜ばしてどうするのよ……自分。

「あの…その新婚夫婦でお願いします」

「チッ」

「あ、ちょっと舌打ちしないで下さいよ!!」

「まぁいいさ。どの道深い関係には、変わらないし」

 いや、だからそれが困るんですってば!!
私は、どうなるのか心配になってきた。
 高速道路で、しばらく走ると途中でサービスエリアに寄った。
トイレ休憩をすることに。