古い手帳を見つける。もちろんその手帳の中には、
田所様の連絡先が書いてあった。
 私は、自分のスマホを取り出すと田所様に電話をした。
 だが、なかなか出ない。時間も時間だし仕事中で出られないのかも……。

仕方がない。私は、留守電に入れて電話を切った。
 それから数分後。田所様から電話があった。

『やぁ夏希ちゃん。どうしたんだい?
よく連絡をして来れたね?』

「社長の古い手帳を見つけて電話したんです。
あの……今時間よろしいですか?話があって」

『う~ん。電話もなんだし、せっかくならこれから会わないか?
さっき会議が終わったから時間作れるし』

クスクスと笑いながら田所様がそう言ってきた。
 えっ?いや。会うのは、どうかと思ったが事情を聞くには丁度いい。

「はい。何処に行けばいいですか?」

 私は、承諾することにした。これも香奈子のためだ。
社長には、秘密にしておかないとうるさいし。
 しばらくして私は、棗をベビーカーに寝かせて
待ち合わせ場所の喫茶店に向かった。
 喫茶店の中に入るとすでに田所様が見えていた。
よく会社を抜け出せたものだ?

「お待たせしました、すみません。
時間まで作ってもらって」

「いや。なかなか夏希ちゃんとは、会えなくなっちゃったから
逆に連絡がきて嬉しかったよ。
 やぁ、棗君。少し大きくなったかな」

 田所様は、棗の顔を見ながらにこりと微笑んだ。
相変わらずひょうひょうとして余裕を感じられた。
 棗に会うのは、産まれてお祝いに来てくれたのが最後かしら?

 あの時は、社長が我が子の自慢をしまくって
それを田所様が、うんうんと聞いていたっけ。
 あれは、さすがに恥ずかしかった。我が夫ながら

「夏希ちゃん席に座ったら?何か頼むかい?」

「あ、じゃあ……コーヒーを」

 そう言うと田所様は、コーヒーを1つ頼んでくれた。
やっぱり社長に比べて大人の男性という感じだ。
 香奈子の相手には申し分ない。