『うわーっ! 屋上とか久々だな! 授業サボってるときにはうってつけの場所だよなー』
「だから授業中いなかったんだ……」
自分の姿が見えていると気づいた袴田くんは、授業中にも関わらず、ひたすら私に話しかけてきた。
頑なに無視を続けていたものの、耐え切れずに怒鳴り返すと、クラスメイト全員と先生に白い目で見られてしまう羽目になった。
なんとか誤魔化して授業に戻ったが、隣では袴田くんが足をバタバタさせて笑い転げていた。腹立つ。
授業を終えてすぐ、彼に手招きして屋上に連れて行く。
幸い授業の間の十分間の休憩であれば、誰かが上がってくることはないだろう。
屋上に出ると、袴田くんは空気をいっぱい吸い込んで、気持ち良さそうに大きく伸びをした。
『連れ出してくれてありがとな、井浦。お前が気付いてくれなかったら、机蹴ってやろうかと思ってたんだ』
「それはちょっと横暴すぎない……?」
『んで、国語のセンセーのズラをちょっとだけ動かす。蛍光灯でテカリが反射する位置くらいに』
「悪質すぎる! 先生の毛根だって頑張った結果で生えなかったんだから労わって!」
『お前も言ってること酷いぞ』
くはは、と袴田君くんは笑う。
特徴的な笑い方もまた、生きていた頃の彼と全く変わらない。
しいていうなら、こんなに嬉しそうに笑う人だっただろうか。授業中でも友人と話しているときも、どこか素っ気無くて、満面の笑みを見たことがない。
「ねぇ、なんでここにいるの?」
私が問うと、彼はキョトンとした顔で瞬きをした。
『ん? 俺を突き飛ばした奴を道連れにしてやろうと思って』
思いがけない発言をさらっと口にした彼に、私は思わず後ずさった。
突き飛ばされた? あの袴田くんが?
まさかの仮説が頭をよぎると、彼はまたくはは、と笑ったを
『なんてな。冗談! 俺自身、なんで死んだのかわかってねぇし。だからそんな地球最後の日みたいな顔すんなよ』
「……ビックリしたぁぁぁ!」
焦った。本当に呪い殺しにきたのかと思った。
ただでさえ、いろんなところに喧嘩を吹っ掛けていた彼だ。恨みごとの一つや二つあってもおかしくはない。
『そんなにビビんなよ。ほら、死んだ人間ができることなんて、傍観するくらいなんだから』
「袴田くんだったら普通に殴り合いとかできそうだけど……」
ホームルームが終わった後に掴まれた左肩は、関節に指が食い込んでいるんじゃないかと思うくらい痛かった。今も少し動かしただけで痛い。
『悪いな。この状態になってから力の加減がわからなくてさ』
「それ以前に幽霊って物掴めるの? 大体通り抜けて何も持てないんじゃ……」
『まぁ、そりゃ幽霊だからな』
幽霊だから物体が掴めない? ……ということは、彼は幽霊じゃない?
「まさか……実はドッキリでした、とか……」
『死者への冒涜だぞ。謝れ』
自分が死んでいる自覚はあるらしい。
「だから授業中いなかったんだ……」
自分の姿が見えていると気づいた袴田くんは、授業中にも関わらず、ひたすら私に話しかけてきた。
頑なに無視を続けていたものの、耐え切れずに怒鳴り返すと、クラスメイト全員と先生に白い目で見られてしまう羽目になった。
なんとか誤魔化して授業に戻ったが、隣では袴田くんが足をバタバタさせて笑い転げていた。腹立つ。
授業を終えてすぐ、彼に手招きして屋上に連れて行く。
幸い授業の間の十分間の休憩であれば、誰かが上がってくることはないだろう。
屋上に出ると、袴田くんは空気をいっぱい吸い込んで、気持ち良さそうに大きく伸びをした。
『連れ出してくれてありがとな、井浦。お前が気付いてくれなかったら、机蹴ってやろうかと思ってたんだ』
「それはちょっと横暴すぎない……?」
『んで、国語のセンセーのズラをちょっとだけ動かす。蛍光灯でテカリが反射する位置くらいに』
「悪質すぎる! 先生の毛根だって頑張った結果で生えなかったんだから労わって!」
『お前も言ってること酷いぞ』
くはは、と袴田君くんは笑う。
特徴的な笑い方もまた、生きていた頃の彼と全く変わらない。
しいていうなら、こんなに嬉しそうに笑う人だっただろうか。授業中でも友人と話しているときも、どこか素っ気無くて、満面の笑みを見たことがない。
「ねぇ、なんでここにいるの?」
私が問うと、彼はキョトンとした顔で瞬きをした。
『ん? 俺を突き飛ばした奴を道連れにしてやろうと思って』
思いがけない発言をさらっと口にした彼に、私は思わず後ずさった。
突き飛ばされた? あの袴田くんが?
まさかの仮説が頭をよぎると、彼はまたくはは、と笑ったを
『なんてな。冗談! 俺自身、なんで死んだのかわかってねぇし。だからそんな地球最後の日みたいな顔すんなよ』
「……ビックリしたぁぁぁ!」
焦った。本当に呪い殺しにきたのかと思った。
ただでさえ、いろんなところに喧嘩を吹っ掛けていた彼だ。恨みごとの一つや二つあってもおかしくはない。
『そんなにビビんなよ。ほら、死んだ人間ができることなんて、傍観するくらいなんだから』
「袴田くんだったら普通に殴り合いとかできそうだけど……」
ホームルームが終わった後に掴まれた左肩は、関節に指が食い込んでいるんじゃないかと思うくらい痛かった。今も少し動かしただけで痛い。
『悪いな。この状態になってから力の加減がわからなくてさ』
「それ以前に幽霊って物掴めるの? 大体通り抜けて何も持てないんじゃ……」
『まぁ、そりゃ幽霊だからな』
幽霊だから物体が掴めない? ……ということは、彼は幽霊じゃない?
「まさか……実はドッキリでした、とか……」
『死者への冒涜だぞ。謝れ』
自分が死んでいる自覚はあるらしい。