目を逸らす彼女の胸倉を掴んで、真正面に顔を向かせる。
私の顔を見た途端、彼女は怯え、ガタガタと歯を震わせた。
「人は、誰のものにもなれない。袴田くんや岸谷くん、ファンの子だって、吉川さんの操り人形じゃない。認められたいことが悪いとは言わない。でもこんなことして虚しいのは吉川さんだよ」
自分が一番だと考えることは悪いことではない。自己満足な行動も、ある程度は目を瞑れる。
それでも「死んだ人が悪い」と他人に責任を押し付ける、それだけは許せない。
しかし、私が何を言っても彼女は「自分は関係ない」と胸ぐらを掴んだ私の手を振り払いながら呟き、顔をゆがめた。
「私は、関係ない……私を見なかったアイツが悪い!」
『もういいだろ』
突然、袴田くんが吉川さんの後ろにまわり、頭を鷲掴みにして無理やり立たせる。力が入っているのか、吉川さんは悲鳴を上げた。
「玲仁く……何を……!?」
『軽々しく俺の名前を呼ぶな』
手ぇ出すなよ?
袴田くんは私と岸谷くんを睨んだ途端、体が急に動かなくなってしまった。
そして吉川さんの顔を覗き込むと、にんまりと怪しげに嗤った。
『ちゃーんと話してくれたら放っておこうとか思ってたけど、こんな構ってちゃんならもういいや』
「え……?」
『最後の通達だ。今日から一週間後、お前は最悪で最高な人生の終わり方をする』
「おわり……かた……?」
『望んでいた死に方になんてさせてやるか。せいぜい後悔しろ』
くはは――と、特徴的な笑い声を残して、袴田くんは吉川さんの頭を離す。
そのまま立ち崩れた彼女は放心状態ながらも、うっとりした笑みを浮かべていた。