震えた声色で、岸谷くんが呟く。

 彼の後ろで吉川さんも、口元に手を当てて驚いている。
 まるで幽霊でも見ているかのような驚き具合に私が首を傾げると、袴田くんは鼻で哂った。

『よっ! 久々だな、岸谷』
「なんで……はぁ!? おまっ……え!?」

 言葉がまとまらないほど混乱している岸谷くんを見て、やっとこの違和感に気付く。

 そうだ、袴田くんは私にか見えなかったはずだ。

 それなのに今は岸谷くんも吉川さんも、彼の姿がハッキリと見えている……らしい。

「どう……いうこと? 袴田くんが、なんで?」
「袴田、お前いつから!?」
『んー……事故った一週間後くらいからずっとここにいるぜ?』
「はぁ!? なんで……つかお前、死んだよな? 俺、ちゃんと葬式にも出たし……」
『そういや来てたな。いい泣きっぷりだった』
「見てんじゃねぇよ! 誰の為に泣いたと思ってんだ!」

 軽快には始まった、袴田くんと岸谷くんの口喧嘩。この二人、敵視していたっていう割には仲が良すぎじゃない?

「おい井浦!」
「へ?」
「へ?じゃねぇ。お前、コイツが近くにいたこと知ってたのか! だから笑い方とか真似できてたのか!」

 岸谷くんの矛先がなぜか私に切り替わる。
 ごめん、あれは真似じゃないんだよ……!
 私が袴田くんに睨みつけると、腹を抱えながら笑う。

『まぁまぁ、岸谷も井浦も、そうカリカリすんなよ』
「うるせぇ! 大体、なんで今まで姿を見せなかった!?」
『俺が出る幕じゃねぇし。……それに、この姿が見えるのは俺が決めた人間だけ』
「決めた……? 何をだ?」

『条件だよ。俺の姿が見えるのは信用している奴と――俺を殺した奴』