息を切らして入ってきたのは、担任と事務員の先生だった。
 後ろには岸谷くんと吉川さんも一緒だ。

「井浦! 大丈夫か!?」
「せ、んせい……? どうして」
「授業中に上から落ちてきたって騒いでな、見たらお前がフェンスにしがみついて、叫び声も聞こえきたから、慌ててきたんだ。来るのが遅くなってすまなかった、怪我はしてないか?」

 呼吸を整える暇もなく、声をかけ続ける先生。
 岸谷くんは黙って自分の着ていた上着を肩にかけてくれた。
 すると、吉川さんが担任と事務員の先生に言う。

「あ、あの。私、ここに来る途中で隣のクラスの女子とすれ違ったんですけど、すごく焦った顔をしていました。やらかした、とも口にしていたので、もしかしたらなにか知ってるかも……」
「なんだと……? 話を聞く必要があるな。岸谷、吉川は井浦を保健室へ連れて行ってくれ。私達でここの処理と生徒に話を聞いてくる。後で井浦にも聞くことになるが、それまでゆっくり休んでいなさい」
「……は、はい」

 先生はそう言って、私達を残して校舎に戻っていった。

 よかった。ちゃんと声、届いていたんだ。
 胸をなでおろすと、隣にいた袴田くんが私の頭の上に手を置いた。

『なんだ、意外に先生って使えるじゃん』
「そういうこと言わないの! 物じゃないんだから」
『俺が逆恨みされて刺されそうになった時は話も聞いてくれなかったぞ』
「それは日頃の行いでしょ」

 不服そうな顔でこちらを見てくる。
 それよりさっさと頭に置いた手をどけてくれ。

「……袴田?」