課長はカップをテーブルの上に戻すと話を続けた。

「それで…今更だが仕事の方はどうだ?君は今まであまり相談事を持ちかけて来なかったから安心していたんだが…今回の事でちょっと放置し過ぎたかもしれんと反省している…」

そんな…放置し過ぎたなら今からでもいいので構って下さい…。

「気にかけて下さってありがとうございます。仕事は…最初は不安でしたけれど、今は楽しくて…やりがいを感じています…」

「それを聞いて安心した…。伊藤くんも君も、思っていた以上に優秀で俺の出る幕はないな」

「そんな!課長がいてくれてこその私たちです。伊藤さんもきっと…同じ思いでいる筈です…」

「うん…伊藤くんも最近やっと顔つきが良くなってきた。最初はどうなる事かと思ったが…」

「きっと…プライベートも充実してるのだと思います。…とてもわかりやすいですから、彼は」

「ああ…どうもそのようだな。俺でもわかるくらいだからアイツは相当わかりやすい」

課長はそう言って微笑んだ。

その微笑みが罪だとあなたが知るのはいつなのかしら…

「課長は…」

「ん?」

「課長はさきほど…恋人はいないと仰いました。ではあのカップは…何なのでしょうか?」

バカな私…

自分から地雷を踏むような事を言いだすなんて…。