「コーヒーでいいか?…あ、紅茶の方がいいな」

えっ? 

どうして…  
私が紅茶が好きだって知ってるの?

「あんまりいい紅茶は置いてないが…」

「あのっ!課長、どうしてそれを?」

「ん?何がだ?」

「だからその…私が紅茶の方がいいと…」

「…ああ、その事か。いつも君は紅茶を飲んでいるから」

確かに言われてみればその通りですわね…。

自販機でもカフェでも、課長と一緒の時に紅茶しか飲んでいない。

でもその事に気付いてくれていた。
それが何よりも嬉しいの…。

「コーヒーが飲めない訳ではないんです。なんとなく、飲みつけているのが紅茶なので…」

「うん、紅茶もかろうじてある。だが…もしかしたら古いか?」

「えっ?」

「未開封だから大丈夫だと思うが…ん?…あぁ…期限が切れてるな…」

私は思わず課長のいるキッチンへ入ってしまった。

「課長、ちょっとその缶を見せて頂けますか?」

「うん?…ああ、これだ」

課長に渡された缶を見てみる。

あら… 一年前に切れてるわね…。

でもこの銘柄なら…切れてても充分飲める筈。香りは多少飛んでしまっているかもしれないけれど。