自動でドアが開くと先に降りた課長が手を差し出してくれた。

掴んだその手の温かさ…力強さ…。

このままその腕の中に飛び込めたなら…どんなにか幸せでしょうね…。

「歩けるか?」

再び萌え質問…。

歩けるけど歩きたくない…。

でも私は本音を言えず「大丈夫です」と蚊の鳴くような声で答えた。

エレベーターに乗り込むと課長は十二階のボタンを押した。

すごく高い所にお住まいなのね…。

見た目だけでもかなり高級なマンションなのに、そこの高層階とは…

そして玄関を開けて中に入った時、更に私は驚いた。

広い…。玄関がこんなに広いマンション…見た事ないわ…。

驚きで唖然と立ち尽くす。

課長はスリッパを出しながら「どうぞ上がって」と言った。

「お邪魔致します…」

課長について入ったリビングでも驚きは増した。

綺麗に片付けられている事もそうだが、置かれている家具のシンプルながらも高級感漂う雰囲気に呑まれそうになる。