でも自分の気持ちに気付いた途端、一方で不安も押し寄せる。

必然的に無口になる私…。

「大丈夫か?酔ったのか?」

私が答えを出す暇もなく運転手さんが反論した。

「冗談言わないでよ、私ゃ、運転歴三十年以上のベテランですよ?今まで車酔いなんてなった人いないんだからねぇ」

「あっ、申し訳ない…。実は彼女は少し体調が悪くて…」

「そうなの?そういや、さっきから顔が赤いね。熱でもあんじゃないの?」

さすがね、運転手さん…。

熱があるのは事実よ。

隣にいるこの人に熱を上げてるの…。

「熱がありそうか?」

課長はそう言ってなんの躊躇いもなく私のおでこに触れた。

あぁっ…!
反則よ!触るなんてっ!

緊張でどうにかなりそう…。

「うーん…なさそうだけどな…」

「そろそろ目的地ですけど、ここからどう行くの?」

運転手さんに声を掛けられ、課長はパッと手を離す。

運転手さん…あなたという人は…

なんて間が悪いの…。

折角課長が私に触れてくれていたのに…邪魔するなんて…

私の殺気に気付いていて?

勿論そんな事に気付く筈もない運転手さんは課長の説明を受けてマンションの前で車を停止した。

すごい… なんか豪華なマンションだわ…。