初めて気付いた自分の恋情に負けて、そんな事にも気付けなかった。

でも…少なくとも今は家にいないという事よね…。

私を自宅に連れて行くんだから…。

そうよ。ネガティブに考えるのはよくないわ。

こんなに素敵な人に恋人がいない事の方が現実離れしていると思うけれど…

今は…私だけを見ていて欲しい。

たとえそれが、ただの上司としてだけの気持ちだとしても。

私にとってのこれが初めての恋だった。

厳格な父の元で育った私は、高校までは女子高で男性と交際した事などなかった。

大学に入ってからもサークルに入る事も禁止され、アルバイトも禁止された状態では恋愛にうつつを抜かしている暇などなかった。

言い寄ってくる男性がいなかった訳ではないけれど、私の心が動かされた事は一度もない。

だからこんなに迸る熱い思いがこの体を駆け抜ける日が来ようとは思ってもみなかった…。